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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

会社で自信を打ち砕かれ、ネットでは万能の神と化す
日本人を自己卑下と自己高揚に偏らせる「比較の罠」

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第3回】 2014年6月25日
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なぜアイツは僕をライバル視するのか?
自己高揚が好きなアメリカ人と嫌いな日本人

 今回は「自己高揚」と「自己卑下」という観点から、勝てないビジネスマンの「黒い心理学」を炙り出し、どうしたら勝てるようになるかを考えよう。

 筆者が社会学部の大学院生として米国のロサンゼルスに留学していたとき、同期にコロンビア大学の学部を卒業してきた「ニューヨーカー」の男の子がいた。彼は白人のイタリア系米国人だった。

 筆者が留学したのは20代後半だったため、彼は数歳年下だった。その彼はなぜか私をライバル視しており、特に数学を使う授業では、随分私の成績を気にしていた。後で聞くと、彼はずっと理数系が得意だったが、アジア系の学生は理数系では大抵白人より成績がいいので、当時の同期で唯一アジア系だった筆者に対して、「得意科目では負けない」と意気込んでいたのだった。

 彼とは統計学の授業で一緒だったのだが、いつも私より先に課題を解こうとし、私が先に正解を出すと、もっと難しい問題を解いてきて「どうだ!」と言わんばかりに私に見せ付けていた。

 私はそういう彼の態度に少し辟易していたが、その点を除けば、とても性格のいいやつだったので、適当にいなしていた。

 統計学の期末試験が終わり、成績が出たとき、私は担当の教授から「君がクラスでトップだったよ」と言われた。私にとっては意外だった。クラスでは彼が最も発言し、難しい問題もこなし、リーダーのような存在だったからだ。私自身、統計学は日本にいた頃にやってはいたが、あまり得意なほうではないと思っていたし、トップになりたいとも思っていなかった。

 なので、教授の言葉に最初私は驚いた。だが当然嬉さも感じたし、それは友人たちが「すごいね」と祝福してくれたときに、ますます大きくなった。

 一方、教授のその言葉を聞いていた彼は、憮然とした表情で教室を出て行った。私は知らなかったのだが、その後教授の部屋に行き、「自分の成績はもっと高いはずだ。ワタベに負けてはいないはずだ」と言って、成績の見直しを迫ったという。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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