これからの日本は、いったいどこへ向かおうとしているのか。
「総中流」社会から、「生活困窮」「孤立無業」の格差社会へ――そんな時代の流れを象徴するかのように、現場で介護の仕事に従事している職員から、衝撃的な話を聞いた。
都内の会社で介護職を務めるBさんは、高齢者の介護のために訪れた家庭で、要介護者の息子や娘たちが、奥の部屋の扉を閉めて引きこもっているケースを数多く見てきたという。
Bさんは、主にケアマネージャーからの依頼を受けて、要介護者の自宅に入り、家事や身の回りの世話などを行ってきた。
しかし、紹介を受ける相手は、70代、80代といった高齢者が多い。そのため、その息子や娘といっても、年齢は30代、40代、ときには50代を超える。
まさに、働き盛りであり、傍目から見ると「働けるはず」と思える世代が、いつも家の中にいて、働けない状況にあるというのだ。
中でも、東京の郊外に住む80代のA子さんの家庭は大変だった。
息子夫婦と孫4人が“引きこもり”
一家の生活費は80代女性の年金頼み
Bさんが彼女の介護のため、自宅を訪ねると、50代後半の息子夫婦は、2人ともずっと家の中にいて、仕事をしていない状況だった。
さらに、4人いる20代の孫は、不登校からの延長で、いまも全員、仕事に就くことができずにいた。
「引きこもり」状態の人たちが増えているのは、なにも少子化・核家族化を背景にした社会特有の問題というわけではない。たとえ、いまどき珍しくなった大家族であっても、A子さんの息子夫婦、孫4人の計6人が、同じ屋根の下で、丸ごと“引きこもり”状態という家庭もあるのだ。