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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

環境問題に“大義名分”で取り組む日本と、“利益誘導”で取り組む国際社会。「ビジョンなきCO2削減論」の先にあるものは?

――“我慢”の先に、“明るい未来”を示せるか?

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第2回】 2009年9月29日
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 鳩山由紀夫首相が、9月22日に国連気候変動首脳会合で演説し、温室効果ガス削減の中期目標について、主要国参加による「意欲的な目標の合意」を前提に「2020年までに1990年比で25%削減を目指す」と表明しました。ここまでは、新政権のシナリオ通りかも知れません。しかし、ここから先は、まさにシナリオなき世界で、国際交渉、産業界や国民を含めた国内の合意形成等、難題が山積です。

 この問題について、私も「CO2削減の仕事をしている方として、ご意見を?」という質問をいただくことがあります。しかし、私は、別にCO2削減のために仕事をしている訳ではないので、正直回答に困ってしまいます。むしろ、「環境問題=地球温暖化問題=CO2削減」と考える思考停止にこそ、違和感を覚えてしまうのです。

 いま、この問題では、産業界が抵抗勢力の如くやり玉にあげられているように感じますが、そもそも、CO2を出すことを生業にしている企業などないと思います。CO2は、われわれの生活を豊かにするためにつくられる製品の製造過程や、日常生活を営むためのエネルギーを利用する過程で排出されるものです。昨日よりも今日、より豊かな生活をしたいと願うのは、われわれの本源的欲望であることから、そのこと自体を否定することはできないと思います。

 しかし、その過程で出されるCO2は、かなり否定されています。こうした「生活向上とCO2排出のトレードオフ」という本質的な問題を掘り下げて考えることをせず、「地球温暖化防止のためにCO2を削減すべし」という大義名分で語ろうとしてしまうところに、無理があるように思えてなりません。

 まずは、この(とても難しい)CO2の問題を取り上げるにあたり、敢えて環境問題から離れたところから考えてみたいと思います。

手段と目的がすり替わるとき

 私は今年の1月上旬にNPOバンクの理事職を退任し、2月末に自分の会社を立ち上げました。会社設立後、はじめて契約が決まり、実際に売上入金があるまでの約3ヵ月間は、無収入の状態になりました。しかしその間も、身体が資本なだけに、健康と体力維持を目的としてスポーツジムには通っていました。

 ある時、ランニングマシーンで走りながら、ふと考えた事があります。それは、「なぜ、無給の自分が、ジムにお金を払ってまで、せっかく摂取したカロリーを消費しているのだろう?」という素朴な疑問でした。つまり、「収入がないなら、体内に蓄えられたエネルギーを出来る限り保持すべきなのでは?」と考えたのです。

 この問題は、当時の私にとっては、かなり切実な問題でした。しかし少し考えた末、「ジムに通う理由は、カロリー消費のみならず、心身ともに健康を保つため」ということに気づいたのです。そこで、食事も財布の中身と相談しつつ、少量でも出来るだけ身体にいいものを選ぶことを心掛け、ジム通いも継続した結果、むしろ以前よりも心身ともに健康的な生活が送れたと思います。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
☆ご意見・お問合わせはこちら  ☆Twitterアカウント:ken_miyama


元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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