ブラジルで実感した
オシム氏の名言

 こんにちは鈴木寛です。

 ブラジルのワールドカップ(W杯)は決勝を残すのみ。次回のコラムをお届けする頃にはどの国が王座に君臨しているのでしょうか。ただ、このクラスに残っているチームのプレーは、フィジカル、スピード、テクニック、組織力のいずれも「これぞワールドクラス」というクオリティーです。

 過去20年でようやく「一流国」になった日本と、「超一流国」であり続けるブラジルなどの国々との間には、まだまだ大きな差があることを痛感します。

「サッカーは人生の縮図である」――。

 最近、私はこの名言が意味することを実感するようになりました。サッカーファンならご承知だと思いますが、かつて日本代表を率いて志半ばに病に倒れたイビチャ・オシムさんの名言の一つです。

 ザック・ジャパンは目標であるベスト8に程遠く、グループリーグは勝ち点1を得るのがやっとという惨敗に終わりました。人間というものは、負けたとき、試練のときほど「人生」の意味を考えるものです。

 もう一つ、私がオシムさんの言葉を拝借すれば「サッカーは国民性の縮図でもある」と感じます。今回はブラジルの現地で私が感じたこと、そして帰国後の世論をみて気づいたことを書いてみます。

稼働しているのは空港と競技場
土産店も道路も人も準備不足

 日本サッカー協会理事の仕事で、私は6月17日から1週間、ブラジルに入りました。ナタールで行われた日本代表の第2戦、ギリシア戦を観戦し、リオ・デ・ジャネイロのマラカナンスタジアムの見学を兼ねてロシア・ベルギー戦を現地で観ました。東京オリンピック・パラリンピックを前に開催期間中の国際大会をその目で見る貴重な機会と思っていましたが、率直なところ、国情があまりに違いすぎました(苦笑)。

 まず、準備の遅れはすさまじいものがありました。日本代表チームの宿舎が現地入りまで1週間を切っても、まだ建物の内装が仕上がっていない等が日本でも報道されていましたが、ギリシア戦のナタールでは大会期間中にもかかわらず、競技場までに至る道路ができていないのです。さすがに空港は稼働していますが、舗装もあまりされていないルートを通ったときには驚いてしまいました。