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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

集団的自衛権「反対派」こそ参加すべき、
「行使容認と戦争抑止力」の議論

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第85回】 2014年7月10日
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 「アメリカの若者は日本のために血を流す覚悟をしている。他国の若者なら命を懸けてもいいが、日本は懸けない。本当にそれでいいのか」

 これは、集団的自衛権行使容認を訴え続けてきた、石破茂自民党幹事長の持論である。日本が攻撃された時に、米国は日本を守る義務があるが、米国が攻撃された時に、日本は米国を守る義務がない。この「異常」な状態は解消すべきであり、他国のように普通に集団的自衛権を行使できるようにするべきだ、という主張だ。

 一見、反論のしようもない「正論」のように思える。だが、実は「日米同盟」の本質から外れた議論なのである。日本人が「血を流さなくていい」のは、米国の意思だったからだ。

日米安全保障条約は
「日本人に血を流させない」ために結ばれたもの

 東西冷戦期、米国はアジア太平洋諸国とさまざまな二国間・多国間同盟を築き上げた。米韓相互防衛条約、米華相互防衛条約、米比相互防衛条約、東南アジア条約機構(SEATO=アジア版NATO)、太平洋安全保障条約(ANZUS=オーストラリア・ニュージーランド・米国)などとともに、日米安全保障条約もその1つである。これら同盟関係は、敵対国である北朝鮮や中国、ソ連など共産主義国からの先制攻撃の抑止という戦略的目的から構築されたものだということはいうまでもない。

 だが、これらの同盟関係構築の目的は、共産主義への対抗だけではなかった。米国がアジアにおける大規模な地域紛争に巻き込まれることを回避する目的もあったのだ。特に、第二次世界大戦の敗戦国・日本が、再び軍事的拡張を図ろうとする野心に回帰し、北朝鮮や中国との大規模地域紛争を起こすことを妨げる狙いがあった。つまり、地域紛争のリスクを減らすためには、敵対国からの攻撃の可能性だけでなく、同盟国である日本が敵対国を攻撃する可能性も封じる必要があると米国は考えたのだった。換言すれば、日本人に再び「血を流させない」ことが、日米安保条約締結の目的の1つだったといえるのだ。

 現在でも、米国の考え方は基本的になにも変化していない。米国は再三再四に渡って、日本に対して中国・韓国との関係改善を求めている。尖閣諸島を巡って日中が紛争に陥り、米国が巻き込まれることだけは、なんとしても回避したいのである。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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