ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

現実的な仮定では、厚生年金積立金は2033年にゼロとなる――年金財政のシミュレーションモデル

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第5回】 2014年7月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回「厚生年金の財政破たんまで40年間程度」と述べた。しかし、これは、赤字額が一定に留まる場合のことである。赤字が拡大すれば、破たんまでの年数は縮まる。実際には、赤字額が年々拡大し、その結果、40年後より前に年金財政が破たんする可能性が高いのである。以下では、シミュレーション分析によって、この点を確かめることとする。

賃金上昇率ゼロの場合、
2040年度の保険料は14年度の約88%に減少

 公的年金財政の将来を考える場合には、基準ケースとして、

(1)物価上昇率や賃金上昇率がゼロ
(2)労働市場への参加率が現在より大幅に上昇することはない
(3)給付について、現在存在しない制度による特別の調整は行なわない

 という場合を示すべきである。なぜなら、それが、保険料納付者や受給者数の推移をあらわに示すものだからだ。そして、マクロ変数や労働市場参加率がそれと異なる推移になった場合に結果がどう変化するか、給付の調整を行なえばどうなるか等を示すべきだ。このようにしてこそ、将来推計は、適切な政策を考える上での参考資料になる。

 しかし、これまで述べてきたように、2014年財政検証は、そのような形で結果を提示していない。

 まず、マクロ変数について、きわめて楽観的な仮定を置いている(最悪の場合でも、名目賃金上昇率が1.3%という非現実的な仮定だ)。また、労働市場への参加率があまり改善しない場合(ケースF、G、H)では、給付を調整するとしている。

 そこで、以下では、まず財政検証から逆算して、伸び率ゼロの場合の収支推移を算出する。その後に、それを用いてシミュレーション分析を行なうというアプローチをとることとする。

 ここでは、労働市場への参加率が現在より大幅に進むことはないと考えた。そして、ケースGとHに示されている保険料収入の値を用いて、名目賃金上昇率がゼロの場合の保険料の推移を計算した。

 結果は、図表1のG'(財政検証のケースGから逆算したもの)とH'(財政検証のケースHから逆算したもの)に示すとおりである。ケースGとHの保険料収入の差は、賃金上昇率の違いだけによるはずである。したがって、賃金上昇率をゼロにした場合には、両者の保険料収入は一致するはずだ。しかし、図表1に示す計算結果には、若干の違いがある。ただし、ほぼ同じ動向を示している。

(注)ケースG'とH'は財政検証のケースGとHを基とし、名目賃金上昇率ゼロの場合に引き直したもの
1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

日本社会は、世界でも稀に見る人口高齢化に直面しており、このため、経済のさまざまな側面で深刻な長期的問題を抱えている。とりわけ深刻なのは社会保障であり、現在の制度が続けば、早晩破綻することが避けられない。この連載では、人口高齢化と日本経済が長期的に直面する問題について検討し、いかなる対策が必要であるかを示すこととしたい。

「野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言」

⇒バックナンバー一覧