報道陣を乗せたバスが、福島第1原子力発電所の敷地内を走る。座席や床はビニールで覆われ、乗り込んだ人も全員、全身を白いツナギ、顔をマスクで覆われている。
写真提供:東京電力
山側から原子炉建屋がある海側へ進み、5・6号機の脇を抜けて回り込むと、バスは北から南に向かって海岸沿いを進んだ。いまだ津波の爪痕が残る、ひどいデコボコ道だ。1~4号機の前を順番に通り過ぎた先に、目的地である凍土壁の建設工事現場が姿を現した。
凍土壁とは、福島第1原発での汚染水対策の柱の一つで、1~4号機の周囲、約1.5キロメートルの地下を氷の壁で囲むことで、原子炉建屋に流れ込む地下水を遮断する取り組みだ。7月8日、地中を凍らせるために埋め込む凍結管の設置工事現場が、着工後初めて報道陣に公開されたのだ。
現場では、鹿島の作業員が4台の重機を使って、凍結管を入れるための直径約15センチメートル、地下約30メートルの穴を掘削する作業中だった。この穴に3重構造の管を入れ、その中にマイナス30℃の冷却液を流すことで、地中を凍らせる仕組みだ。全部で約1550本の凍結管を埋め込む予定で、7月7日時点で90本が完了したという。
そうした作業と同時進行で除染など現場状況の改善も着実に進んでいる。例えば、この日公開された工事現場はかつて事故が起きた際に、水素爆発を起こした4号機のすぐ脇の通路。従来は顔を全て覆う全面マスクの着用が必要だったが、除染活動によって、鼻より下を覆う半面マスクの着用で済むようになったのだ。