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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

【新連載】
私が日本の可能性を信じている理由

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第1回】 2014年7月28日
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マイクロソフトに会社を売却
日本への恩返しを決意

 I/Oソフトウェアではその後、いろいろな仕事を手がけましたが、何度も失敗して倒産ニアミスというケースが6回もありました。

 最終的にヒット商品となったのが「生体認証システム技術(BAPI)」です。2000年には認証技術がマイクロソフトの基本ソフトに組み込まれ、全世界160社以上とライセンス契約を締結。BAPIは事実上の世界標準規格となりました。

 すると、ビル・ゲイツから「あなたの会社を丸ごと買いたい」という話が。一度は断ったのですが、その熱意に根負けして2004年12月に売却しました。

 会社を売却してリタイア状態になった私ですが、何かを創り出したいという情熱は消えてはいませんでした。

 そして「さて、これからどうしよう」と思ったとき、心に浮かんだのが「I/Oソフトウェアが飛躍できたのは日本のおかげ」ということ。NECをはじめ、東芝、富士通、ソニーと、どの企業も若い私たちに大きなチャンスを与えてくれ、辛抱強く支援してくれました。

 ですから、今度は私が日本への恩返しとして、日本の若いベンチャー企業を支援する番だと考えたのです。2005年、私は東京行きを決断しました。

 ところがどうでしょう。日本は想像していた以上に閉塞感に満ちており、チャレンジ精神はどこにも見当たらない。以前のような輝きを失っていたのです。

日本に足りないのは
「アタマ」の切り替え

 日本のバブル経済崩壊以降を“失われた20年”とよく言いますが、外国人の見方は違います。私は欧米からアジア、中東まで、さまざまな政府に招かれて講演する機会がありますが、そこで聞くのはこういう話です。

 「日本って不思議な国ですよね。20年間ダメだったといわれているが、じつは何も変わっていない。工場や大学、研究所などがなくなったわけではないし、治安もいい。技術、教育、資本…すべて整っている」と。

 これからインフラ投資に何兆円も使わなくていいのだから、他国からすれば“贅沢”なくらいというわけです。

 ただ、今の日本が失ってしまったものがあるとしたら、それは「自信」と「ハングリーさ」だと思います。ということは、「アタマ」を切り替えさえすればいいだけの話。それなら、変えるのに時間はかからないはずです。成長へと反転攻勢できる大きな可能性を秘めているのですから、日本がチャレンジ精神を取り戻すのは決して難しいことではないでしょう。

 ただ、守りから攻めに転じてチャンスをものにするには、失敗を恐れずに行動することが不可欠です。今こそ、行動を起こすべきです。あと十数年で、アジアのGDP合計額が世界のGDP合計額の過半数以上を占めるようになりますが、そのトップに位置するのは、ほかでもない日本だと私は思っています。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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