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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

【新連載】
私が日本の可能性を信じている理由

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第1回】 2014年7月28日
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 それには、技術力だけでなく、デザインやリベラル・アーツの要素も必要。たしかに日本メーカーの携帯電話は技術的に非常に優れています。iPhoneを凌ぐ部分もあるでしょう。しかし、日本で一番売れているのはiPhoneです。その理由はデザインにあります。見た目の魅力だけでなく、操作性のよさなども含めたデザインという点で日本製は明らかに劣っていると言わざるを得ません。

 つまり、R&D(研究開発)において、日本のResearch(研究)はハイレベルですが、Development(製品開発)の力が足りない。よい技術なのに売れないのはこのためです。研究されたものを活かす組織やビジネス的な発想といったイノベーションを起こすための環境が不足しているのです。

 かつては、単体のハードウェアやソフトウェア、あるいは特定の技術の優劣がビジネスの勝敗の大きな要因でした。しかし今は、それらを融合させたシステムの優劣で勝敗が決まる時代になっているのです。

 また、ICT(情報通信技術)は重要ですが、半導体やストレージなどの開発に投資してはいけません。これらは値段がどんどん安くなり、いずれタダになる可能性が高いからです。

 これからの企業は、そうしたことを前提とした、革新的な技術やビジネスモデルを考えていくべきです。

CPUが人間の脳を超える未来は近い
そのときにどんなビジネスができるのか

 では、私たちは何に投資すべきなのか。

 今のテクノロジー社会にどんな未来が待ち受けているのかを考えてみることがヒントになるでしょう。

 キーワードは「マシン・エイジ2.0」。マシン・エイジ1.0は、1700年後半に蒸気機関とともに始まった産業革命です。人の筋肉に代わる動力の開発・進化が進みました。ただし、決定を下すのは人間です。機械が人間の労力を補完する関係にあります。

 これに対し、マシン・エイジ2.0では、急激なコンピュータ性能の向上が革命的な変化をもたらすと考えられています。

 来年にはCPUがネズミの脳を超え、2020~2030年にはついに人間の脳を超える。この頃には人間の脳と同じ能力を持つCPUがパソコンに搭載されるといわれています。

 そして2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)を迎え、CPUは世界中の人間の脳を集結したものを凌駕するといわれています。

 このように、これからコンピュータの処理速度は爆発的に高速化していきます。今はちょうどその登り口なのです。しかも、2030年といったら東京オリンピックにプラス10年。決して遠い未来の話ではありません。

 その未来にどんなビジネスができるのかを考えてみてください。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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