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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

なぜあなたは英語がちっとも上達しないのか?
ダメな自分を許せない「自己愛型社員」の袋小路

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第6回】 2014年8月6日
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逃げることで自尊心を維持したい
日本でも増え続ける「自己愛型社員」

 本連載「黒い心理学」では、組織の活性化を蝕む「心のダークサイド」が、いかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

前回は、性格にも能力にも一見問題はないが、やるべき仕事から逃げてしまう「マイルドなフリーライダー」の例を紹介した。そしてその原因が、「できない自分を直視できない」ことにあると指摘した。

 そういった人は、自分が失敗するかもしれないような出来事から、逃げようとする。サボりや仮病など、意識的に逃げる場合もあれば、嫌な仕事を前にすると体調が悪くなるなど、無意識的に逃げる場合もある。逃げることで、自尊心を維持しているのだ。

 こういった傾向が病的に強くなると、時として自己愛性パーソナリティ障害という疾患になることもある。この障害は、自己を愛するあまり、ありのままの自分を受け入れることができず、「自分はもっと優れていて素晴らしいはずだ」と思いこむ精神的疾患である。

 これは極端な例ではあるが、そこまでは行かなくとも、「自分はもっと優れているはずだ」と思っている程度の人は、世の中にゴマンといるだろう。別に不思議なことではない。それが、日常生活や対人関係に支障をきたすようなレベルにまでなると、専門家が精神疾患として扱う。したがって、正常と異常の線引きは難しい。

 あくまで私見だが、今の日本には自己愛性パーソナリティ障害の予備軍が、かなり多くなったように思われる。その理由については専門的になるので、ここでは省略する。だが、ひきこもり、ニート、新型うつ、「明日から本気出す」症候群、ブラック職場の社畜、などという現象の背後に共通するのは、全ての人に当てはまるのではないにせよ、この障害である可能性が高いのではないかと、筆者は考えている。

 自己愛性パーソナリティ障害については、多くの研究が発表されており、様々な事例や分類が専門家によって行われているが、その中でも米国の精神科医、グレン・ギャバードの分類が面白い。

 彼によると、この障害を持つ患者は、全く違う2つの行動のタイプに分類されるという。1つは「オラオラ型」で、いつも注目を浴びていないと気が済まない、批判をされるとその内容など関係なく烈火のごとく怒る、傲慢で攻撃的な上に「自分大好き」、一見他人の意見など気にする風でもない、というタイプだ。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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