明らかになる「エリート社員」の正体
タダ乗り社員問題はますます複雑化

 本連載、「黒い心理学」では、組織を蝕む「心のダークサイド」が、いかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説してきた。

 筆者がこのテーマに取り組んだ1つのきっかけは、2010年に出版した『フリーライダー~あなたの隣のただのり社員』(講談社現代新書)の取材である。フリーライダーとは、経済学の用語で公共財の資源供出に協力せず、財のみを享受するような行動をとる人物を指す。

 ここでは、その定義をもうちょっと柔らかくし、もうちょっと広げて、「職場で皆に仕事をさせておいて、自分は大した貢献をせずに、給料(や昇進や福利厚生などの待遇)は、ちゃっかりともらってしまうような人」を意味する。

 一流企業を含む20社以上を取材し、人事部長クラスから一般社員までを対象としてインタビューを行った結果、日本の企業組織におけるフリーライダーは、①アガリ型サボり社員、②アレオレ詐欺型成果横取り社員、③ダークフォース型チャレンジ否定社員、④破滅型クラッシャー社員、の4つのカテゴリに分類できることがわかった。

拙著『フリーライダー』の中では、少し違った言葉で記述しているものの、同じカテゴリのフリーライダーについて、その詳しい行動特性と対処法について述べている。

 しかし、この本の出版から3年を経た現在、社員のタダ乗り問題は、より複雑になっているようだ。この本の読者から、以下のような話をうかがった。

 その方は、ある中堅会社の事務職員だ。仕事内容は総務で、社外広報や社内イベントの取り仕切り、それについての会計処理も請け負う。取引相手への提出書類のチェックや、社外向けの会社情報もここで作成する。時には営業に近い仕事も行うため、総務とはいえ会社の最前線におり、社内で最も忙しい、いわば「花形部署」でもある。

 3年ほど前、そこにAさんという男性が中途採用で入ってきた。Aさんは一流大学を卒業し、某一流企業での営業、カスタマーサービスを経て、製品企画などの仕事を10年ほど行った後、その会社に採用されたのだった。Aさん自身は、その一流企業での仕事内容に行き詰まりを感じており、新しい環境で仕事に取り組みたいと思っていたという。