2009年以降、長く続いてきた牛丼値下げ戦争にピリオドが打たれそうだ。最安値を提供してきた牛丼チェーンの「すき家」が、ついに値上げを打ち出したからだ。

 すき家を運営するゼンショーホールディングス(HD)は、8月27日から牛丼の並盛を税込み270円から291円に値上げ、その他のサイズも軒並み20~40円値上げする。

 値下げ基調が続いてきた牛丼業界の潮目が変わったのは、4月の消費増税。直前まで280円で横一線だった牛丼並盛を、「吉野家」が300円に値上げ。「松屋」も、7月22日からチルド(低温保存)肉を使用した「プレミアム牛めし」を投入、380円という強気の価格を打ち出した。

 これに対しすき家だけは、消費増税後も踏ん張って270円へと10円の値下げに踏み切る。だが、外食産業の関係者は、「経営的にはキツかったはず」と指摘する。

 というのも、デフレ下の常とう手段は、インパクトのある大幅値下げを打ち出し、1皿当たりの粗利益の低下を客数増で賄うというもの。280円は原価ギリギリで、客数の増加は絶対条件だった。

 にもかかわらず、すき家の客数は伸び悩んだ。値下げに踏み切った4月から7月までの4カ月累計で、既存店客数はわずか0.7%増にとどまったのだ。値下げとはいえ吉野家との差はわずか30円。消費者が低価格に慣れ切ってしまったためか、インパクトが薄かったとの指摘もある。

ワンオペ9月末で終了

 そんなゼンショーに追い打ちを掛けたのが、過剰労働問題だ。深夜時間帯での1人勤務(通称ワンオペ)などを敬遠し、アルバイトが次々と退職、約2000店のうち最大250店が一時閉鎖に追い込まれた。