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森信茂樹の目覚めよ!納税者

原点に返り消費税率引き上げ意義を考える
家計ごとに社会保障の受益と負担を試算すると……

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第76回】 2014年8月20日
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消費税率8%への引き上げについて、当面の経済への影響が、あらかじめ想定されていた範囲内のものかどうか大きな話題となっている。筆者は、増税を行ったのだから、短期的には多少の経済への悪影響は避けられず、それはやむをえないと考える。重要なことは、その先にある経済・社会の姿を、社会保障・税一体改革の原点にさかのぼって考えるてみることだ。その思いから、家計ごとの受益と負担の関係を試算してみた。

消費税率引き上げと経済状況

 14年4月から消費税率が8%へ引き上げられ、来年10月には10%への引き上げが法律で決まっている。8%への引き上げの経済に与える影響について、4~6月のGDP速報値が年率6.8%の大幅なマイナスとなり、「想定内」かどうか見解が相拮抗してきた。

 筆者は、消費税増税が行われ、平年ベースで8兆円以上の購買力が国民から国に移転された(もっとも、公共事業などで5兆円分を返すことになっているのだが、資材や人手の不足により進捗していない)わけだから、短期的に経済にマイナスの影響が及ぶことは避けられないと考えている。

 今後は消費税率10%への引き上げの最終決断が年末までにも行われるが、問題は、本当に景気の腰折れをもたらすような状況になるかどうか、経済のデフレからの脱却が本物かどうか、ということであろう。

 この点について、欧州諸国では、それほど経済状況がよくなくても、継続的に消費税を引き上げて税収を確保し財政再建を優先させてきたが、そのために経済が落ち込むという現象は見られなかった。

 たとえばドイツは2007年に16%から19%へ、英国は10年に15%から17.5%へ、さらに11年に20%へ消費税率を引き上げたが、今日まで経済は順調に成長し、税収も増加している。

 わが国の前回(1997年)の消費税率引き上げ(3%から5%へ)後の経済の落ち込みは、直後に生じた国内とアジアの金融危機の影響が大きく、今回そのようなことがない限り、回復基調に戻ってくると思われる。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

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