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【敗れざる人々(3)】
アイリスオーヤマ、西松屋チェーン…
新天地で再び輝く元電機技術者のいま
――日本経済新聞編集委員 大西康之

大西康之 [日本経済新聞 編集委員]
2014年8月25日
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関西に、電機大手を離職したベテラン技術者の駆け込み寺が二つある。日用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)の「大阪R&Dセンター」と、ベビー服の西松屋チェーン(姫路市)だ。心ならずも去ったベテラン技術者たちは、ここで往年の輝きを取り戻している。まるで名門チームでベンチを温めていたベテラン選手が、新興チームで4番を打っているかのように。

大阪のど真ん中にビルを1棟買い

大阪市中央区東心斎橋にあるアイリスオーヤマ大阪R&Dセンターのビル
写真提供:アイリスオーヤマ

 アイリスオーヤマは昨年末、大阪市のど真ん中、心斎橋にある9階建てのビル1棟を丸ごと買った。大阪R&Dセンターと名付け、今春から約40人の技術者が扇風機、電子レンジ、衣類乾燥機などの家電製品の開発に従事している。1階は同社の看板商品の一つLED照明のショールームだ。仙台に本社を置く同社がなぜ、心斎橋にR&Dセンターを作ったのか。社長の大山健太郎はこう説明する。

 「姫路(兵庫県)からも大津(滋賀県)からも天理(奈良県)からも通勤できる場所を考えたら、ここになった」

 姫路にはパナソニック、大津には旧三洋電機(現パナソニック)、天理にはシャープの生産・開発拠点がある。関西家電メーカーのリストラはやむ気配がない。軽家電に進出したアイリスは、あふれ出る関西家電の技術者を受け入れ、開発力を一気に強化する策に出た。ビルを1棟買いしたのは「100人くらいは採用したい」(大山社長)という野心の表れだ。本格的な検査・実験装置を入れるスペースも確保した。

 「仙台に来てもらうことも考えたが、皆さん生活の基盤は関西だから、大阪の方が働きやすいでしょう。今はIT(情報技術)があるから距離は関係ない」(大山社長)。リストラの度に西へ東へと振り回されてきた電機各社の技術者には身に染みる配慮だろう。実際、パナソニックを辞めてきた電子レンジの技術者は「ここだから来る気になった。仙台だったら、行ってませんわ」と打ち明ける。大山の作戦勝ちである。

 アイリスが電機大手の技術者を採用し始めたのは2012年の秋。生活用品やLED照明の生産を委託する中国メーカーを訪れた大山は、行く先々で元三洋、元シャープ、元パナソニックの技術者に会った。ほとんどの人が単身赴任で第二の人生を懸命に生きていた。LED照明に参入し、パナソニックや東芝に挑んでいた大山には、彼らが労働市場に湧いて出た宝の山に見えた。

 アイリスが採用しているのはリストラの対象になりやすい50代後半の技術者だ。40代で管理職になり「図面を引くのは10年ぶり」と言いながら、数ヵ月もすると勘を取り戻す。アイリスでは自分が開発した製品がすぐ店頭に並ぶ。大きな組織の中で裁量権を奪われ、もやもやしていた彼らは、畑違いの仕事でも、任せれば「すっきりした表情でやってくれる」(大山)。家電に進出して日の浅い同社にとって、修羅場をくぐってきたベテラン技術者の経験は貴重だ。

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大西康之[日本経済新聞 編集委員]

おおにし やすゆき/日本経済新聞 企業報道部 編集委員、1988年日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日経ビジネス編集委員などを経て2012年から現職。著書に『三洋電機 井植敏の告白』(日経BP社)、『稲盛和夫最後の闘い~JAL再生に賭けた経営者人生』(日本経済新聞出版)がある。

 


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