「となりの部署では育休がとれるのに、うちの部署の上司は認めてくれない」
 「最初の飲み会で脈絡もなく、いきなり『彼氏いる?』と聞かれた……」
 「先輩のクライアントを引き継ぐとき、同行した上司が『担当者が女性で申し訳ありません』と言っていた……」
 「上司の意見に反論したら『最近の女性はすごいね。僕らの時代なら考えられなかったな』とため息をつかれた」

 いまは、大手はもちろん中小企業であっても、制度として育休や時短を取り入れているところが増え、人事制度でも男女格差が撤廃されつつあります。

 しかし、女性たちと話をしていると、それらが効果的に運用されているケースはどうやらまだそう多くはなさそうです。ハード面は順調に整っているものの、ソフトを運用していく現場の上司が女性活用に理解がなかったり、努力はしているけれどいまひとつズレた気遣いをしていたりと、上司の力量によって大きな差が生まれているのです。

 少子化で労働力が先細りの日本という国において、女性社員の活用は避けて通ることができない命題のひとつです。上司は「女性部下なんて面倒くさい」などと逃げられない時期にきているのです。

 そんな現状から本連載では、女性部下たちの置かれている立場やキャリア観、本音を探り、上司として上手にナビゲートしていく方法をさまざま提案してきました。実際には、女性部下の数だけ対処法も違ってくるわけですが、大きなポイントとして、以下の大きく4点に集約されそうです。ぜひ、女性社員ならではの特性を正しく理解し、女性部下にとっても、上司にとっても、実りある関係を構築してください。

【ポイント①】 組織の全体像が見えるような工夫をする
――女性社員は「自分軸」が強い

 私は、小さな仕事しか任せてもらえないと不満を抱く若手社員に、部下を生かすオリジナル組織図を描いて、仕事の全体像を共有するようにしていました。この手法は、自分の「やりたい仕事」にこだわりすぎていたり、自分の目に見える範囲の中でのみ判断してしまったりすることが多い女性社員にも有効です。

 正社員、派遣社員を問わず、会社という組織の中での自分の立場や役割をなかなか俯瞰して見ることができない彼女たちのために、上司は自分がマネジメントしている部門とその女性社員との関係を中心にした組織図を作るのです。まず、各メンバーの「名前」「年次」「強みや人となりを表したキャッチフレーズ」を記入していきましょう。たとえば、「書類作成のプロ 佐々木(派遣社員/2年目)」「斬新な閃きとアイデアの宝庫 小林/3年目」といった感じです。

 さらに、上層部や関係する他部署、取引先、パートナー企業はもちろん、社内の契約社員、派遣社員、外部スタッフなど、日常的にやりとりのあるメンバーを書き込みます。

 「上司は上ばかり見て仕事をしている」と不満を口にする女性社員に対しては、部下を生かすオリジナル組織図を見せながら、「キミから見えている景色だけで判断すれば、不満を抱くのはわかるが、上層部も取引先からプレッシャーを受けていて、苦渋の決断をしたんだ」と全体像を理解させると、納得を得やすいでしょう。