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野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

GDPの4%強の介護費用をどう負担するか?
――介護保険の仕組みと問題点

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第11回】 2014年8月28日
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 前回は、労働力の観点から介護の問題をマクロ的に考えた。今回は、サービスの市場価値の観点から考える。

介護の総費用は、
GDPの4%強

厚生労働省の資料によると、2012年度の年間介護総費用は8.9兆円となった。これは、12年度の名目GDP472.6兆円の1.88%である。

前回述べたように、介護従事者の総労働力人口に対する比率は、10年で2.01%程度だ。GDPに対する比率がこれより低くなるのは、介護従事者の平均賃金が経済全体の平均賃金より低いからである。

 ところで、厚生労働省による「介護総費用」の中には、家族が提供している家庭内看護にかかわる費用はカウントされていない。これをカウントすれば、介護に必要な費用はもっと大きくなる。日本の介護は在宅介護中心なので、これはかなりのウエイトになっているはずである。

 その額を正確に推計するのは難しいが、第9回で紹介した生命保険文化センターの「要介護状態となった場合の公的介護保険の範囲外費用に対する経済的備えとして必要と考える資金額は、月額17.2万円」という数字が参考になる。有料老人ホームの月額利用料をみても、月17万円程度である場合が多い。これらから判断すると、この程度(年間200万円)が、家族が提供している要介護者1人あたりのサービスの価値と考えることができるだろう。

 要介護等人口が560万人であるので、年間11兆円強だ。これは、GDPの2.4%程度に相当する。

 家族が提供するサービスは市場を経由するものでないため、現在の統計ではGDPにカウントされていない。しかし、持家の家賃が帰属家賃としてGDPにカウントされるのと同じ意味で、本来はこれもGDPに含まれるべきだ。

 そうだとすれば、介護サービスの総額は、厚生労働省の費用8.9兆円と合わせて、GDPの4%強ということになる。これは、かなり高い比率である。介護活動は、日本の経済活動の中で無視しえぬウエイトのものとなっている。しかも、この比率は将来さらに高まることが確実である。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言

日本社会は、世界でも稀に見る人口高齢化に直面しており、このため、経済のさまざまな側面で深刻な長期的問題を抱えている。とりわけ深刻なのは社会保障であり、現在の制度が続けば、早晩破綻することが避けられない。この連載では、人口高齢化と日本経済が長期的に直面する問題について検討し、いかなる対策が必要であるかを示すこととしたい。

「野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言」

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