経営のためのIT
【第25回】 2014年9月12日
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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

深い谷の向こう側にいる経営者
――ITの潜在的可能性をいかにわかりやすく説くか

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経営におけるITの重要性が声高に叫ばれているものの、依然としてITにあまり関心を示さない経営者や事業責任者は少なくない。ITとビジネスの間の深い谷をどのようにして埋めていくことができるのだろうか。

本連載の1年間を振り返る

 本連載「経営のためのIT」は開始から丸1年が経過し、今回から2年目に突入する。そこで、今回は少し趣向を変えて、この1年間の連載を振り返るとともに、筆者が日ごろから抱いている「経営のためのIT」に対する思いを述べておきたい。

 筆者は、本連載がWebサイトに掲載されたら、必ずFacebookで「〇〇について新規寄稿が掲載されました」といった趣旨の投稿をすることにしている。そうするとそれを見た友人が「いいね!」を付けたり、コメントやシェアをしてくれることがある。最近はこうした寄稿に対するフィードバックが直接得られることが嬉しいと同時に非常に勉強になると感じている。

 1年間の連載記事の中で筆者にとって一番反響が大きかったのが『【第19回】 目的は「1人1台タブレット」ではない!ITによる業務改革の本質をはき違えないために経営者がすべきこと』であった。この記事を読んでわざわざメッセージをお送りいただき友達申請もいただいた読者の方もいた。

 この記事では、多くの企業にとって共通の関心事である営業革新を例にとって、業務改革を「プロセス指向」と「ナレッジ指向」の2つの方向性で整理する考え方を示している。頂戴したコメントでは「さまざまな情報化の取り組みが、ナレッジ化とプロセス化で整理できることに気づいた」「身近な例が示されていて理解しやすかった」といった声が聞かれた。

 実は、この「プロセス指向」と「ナレッジ指向」の考え方は、今から十年以上前の2002年に、ある大手製造業の営業革新のプロジェクトを支援した時に考案したものである。当時はスマホもタブレットもなく、SNSも普及していなかった時代であったが、2000年に当時の森喜朗内閣がe-Japan構想を発表したこともあり、ITを活用した業務改革には多くの企業が関心を持っていた。

 その企業では、既存事業の収益構造の転換に取り組む必要に迫られており、当時の営業企画部長が営業革新を経営層に提案していた。しかし、ITを活用した営業革新での具体的な施策は、営業のモバイル武装、問合せ対応の一元化、営業日報の電子化、商談進捗管理や各種承認フローの合理化など非常に多岐にわたるものであり、どこからどのように手を付けていくべきか経営層にも判断がつかないという問題を抱えていた。

 そこで「プロセス指向」と「ナレッジ指向」を2軸にして各施策のポジションを整理して説明したところ、経営者の理解が深まりプロジェクトが承認されたという経緯がある。

 筆者にとっても、ITについて必ずしも詳しくない経営者や事業責任者に、わかりやすくプロジェクトの目的や重要性を伝えることがいかに重要であるかを再認識した出来事だった。

 それにしても今回の連載への反響により、こうしたIT活用や業務改革に対する考え方は十数年経った今でも十分に通用するということをあらためて感じた。技術は飛躍的に進化してきたが、「経営のためのIT」の本質的な部分は何ら変わらないということだ。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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