経営のためのIT
【第19回】 2014年6月13日
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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

目的は「1人1台タブレット」ではない!
ITによる業務改革の本質をはき違えないために
経営者がすべきこと

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業務改革は経営者の重要な関心事であり、ITに期待される領域でもある。しかし、ITを活用することで業務をどのように改革していくかについて明確な方針を打ち出すことができている経営者は必ずしも多くない。

業務改革とは何か

 中期経営計画や経営戦略ビジョンの1つに業務改革を掲げている企業は多い。業務改革の推進に向けて業務改革室のような組織を設置する企業もある。ビジネス環境が著しく変化する時代にあって、これまでと同じやり方で業務を遂行していても競争優位性を維持・向上することが困難であるという認識は的を射たものといえるだろう。

 では、そもそも業務改革とはいったいどのようなものなのだろうか。実は、業務改革を明確に定義づけた文献はあまり見当たらない。「改革」というぐらいであるから単なる業務の効率化を超えた概念と考えられるが、その違いはどこにあるのだろう。また、業務改革をBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の日本語訳であると考える人も多い。

 BPRは、マイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピー が1993年に出版した『リエンジニアリング革命――企業を根本から変える業務革新』 が契機となって、バブル崩壊後に流行した言葉である。ハマーとチャンピーはBPRを「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的な成果基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義している。つまり、BPRで再設計・再構築する対象はビジネスプロセスということを意味する。

 一方、業務改革は、業務プロセス(すなわち業務の流れや進め方)だけでなく、業務そのものの必要性、業務を取り巻く情報やコミュニケーションの環境、関係する人材や組織のあり方を対象とした変革を包含したより広範な概念といえる。

 ここでは、業務改革を「競争力の向上や提供価値の増大を目的に、業務そのもののあり方とその実行環境を抜本的に見直し、再構築すること」と定義する。

「プロセス指向」と「ナレッジ指向」

 業務改革には、「プロセス指向」「ナレッジ指向」「イノベーション指向」の大きく3つの方向性が考えられる。前回「企業の営業革新に必要な『セールス・ガバナンス』とはなにか?」で取り上げた営業革新も、業務改革の1つの領域における取り組みと言えるが、ここではまず、この営業革新を例にとって「プロセス指向」「ナレッジ指向」の2つの業務改革の方向性について考えてみることにしよう。なお、「イノベーション指向」の業務改革については別途この連載で取り上げることにする。

 営業革新という1つのテーマであっても、企業の経営環境、経営ビジョン、所属する業界、取り扱っている商品、顧客や従業員の特性などによって目指すべき方向性、すなわち「理想とする営業」の像は1つではない。まずは、自社のビジネスにはどのような営業革新が適合するのかを見極めることが重要となる。

 現在進められている営業革新に対する取り組みの多くは「プロセス指向」と「ナレッジ指向」の2つの方向性に分類することができる(図1)

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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