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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

COP15で明らかになった、
国際交渉「全会一致」の限界

――最大公約数から、最小公倍数で「事実」を積み上げていく時代へ

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第8回】 2010年1月12日
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 昨年末、コペンハーゲンで開催された『国連気候変動枠組み条約第15回締約会議(COP15)』は、政治的合意文書である「コペンハーゲン合意(コペンハーゲン・アコード)」を全会一致で採択できず、「合意に留意する」ということを容認するにとどまりました。

 交渉決裂、ゼロ回答を回避し、かろうじてギリギリの形にとどめることは出来ましたが、具体的な数値目標などが明示されなかったことから、その成果には、疑問の声も上がっているようです。

 しかし、この結果については、そこに至る過程も踏まえ、日本政府や企業、そしてわれわれ一人ひとりが、今後10年、さらにその先を考えるうえで大きな示唆を得るものであったと思うのです。新たな10年の始まりである2010年最初の連載では、まずこのことについて考えていきたいと思います。

利害を「最大公約数」で
調整するのは困難な時代に

 COP15でまず感じたことは、「環境問題の議論は、環境的側面だけから眺めていてはもはや議論にならない」ということです。

 国際社会には、環境問題の他にも途上国経済の発展、教育、エネルギーの利活用、安全保障、貧困などの問題が複雑に絡みあっています。それぞれの問題の優先度は、国ごとに異なることから、各国の利害を“最大公約数的”に調整することは、極めて困難な作業になっています。国内に目を転じても、少子高齢化や、雇用、経済再建に向けた取り組みなど問題が山積し、複雑に絡み合っていることは周知の事実です。

 COP15において、アメリカのオバマ大統領をはじめ先進国の首脳が、最後の最後までギリギリの政治的合意に向けた努力をしたのは、環境問題と国内外において複雑に絡み合うさまざまな社会問題との繋がりや関係性を理解していたからなのだと思います。

 いまや環境問題への対応は、それ自体を“目的化”するのではなく、複雑に絡み合うさまざまな社会問題と関連づけ、それらの問題を解きほぐすための“手段”のひとつとして捉える必要があるのではないでしょうか? つまり、環境問題という狭い枠組みの中だけで思考停止するのではなく、発想のフィールドを広げて、さまざまな社会問題と環境問題との繋がりをイメージし、具体的な行動に移すべきだと思うのです。そのヒントは、アーティスト的なクリエイティブ・シンキングの発想にあると思います。

 企業などで行なわれている一般的な会議においては、あらかじめ議題や全体的な流れなどを決めていることが多いと思います。そこで発言される内容は、前例が行動規範となり、常識かつ無難な領域にとどまるため、予定調和的なものに終わりがちなのではないでしょうか? 「落としどころ」という言葉もある通り、こうした会議では“最大公約数的”な結論になりがちです。

 一方、クリエイティブ・シンキングを用いた会議においては、テーマこそ事前に決められているものの、それぞれがアイデアを持ち寄り、そのアイデアを自由に交換し合うことで、参加者が自らの構想を熟成していく作業が展開されていきます。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
☆ご意見・お問合わせはこちら  ☆Twitterアカウント:ken_miyama


元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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