ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

朝日の「吉田調書」スクープで無関心は加速する
前代未聞のメディア・イベントはいかに成立したか
——社会学者・開沼 博

開沼 博 [社会学者]
2014年9月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

11日、政府は「吉田調書」を公開した。朝日新聞の木村伊量(ただかず)社長が、吉田調書に関する報道の誤りを認めて記事を取り消し、謝罪したことは大きな話題を呼んでいる。被災地不在のメディア・イベントはいかに成立したのか。前編に続いて今回は、調書公開に至るまでの過程を綿密に検証し、震災報道が抱える本質的問題を開沼博が指摘する。

朝日新聞の報道には擁護の余地も意義もない

 11日、政府は、政府事故調(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会)が吉田昌郎福島第一原発所長(当時)ら19人の証言から作成した調書(聴取書)を公開した。

 それを受けて各報道機関は、その要約や調書から読み取れる、これまで明らかになっていなかった事実を報道している。同時に、調書公開を受けて、朝日新聞の木村伊量社長が、朝日新聞の「吉田調書」に関する報道の誤りを認め記事を取り消し、謝罪したことについて、様々な意見が飛び交ってもいる。

 本稿では、それら個々の調書に関する報道の詳細を踏まえつつも、前回記事で提示した3つの前提のうえで、吉田調書に議論の対象を絞り、その内容や社会的位置づけ方について、現状でまとめておくべき論点をいくつか挙げておきたい。

 調書公開とそれに関連する報道から生まれた意見のなかには、「たしかに、誤報や曲解は問題があったけれども、だからといってすべて間違いというわけではない」「朝日の報道がなければ、調書の公開など検討すらされなかったので意義がある」といった意見がある。

前回記事でも述べた通り、私は、むやみに朝日新聞とその他の報道機関との対立構造を煽ったり、スクープの関係者を吊るし上げる態度には同意しない。しかしながら、このような事態になってまでもなお、ここに至るまでの朝日新聞の報道に「擁護する余地」を見い出そうとしたり、強引に「意義」をこじつけようとしたりという議論にも同意しない。そういう姿勢には、今回の事件に関する根本的な認識が不足していると言わざるを得ない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 


DOL特別レポート

内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。

「DOL特別レポート」

⇒バックナンバー一覧