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どう中国と付き合うか 日中首脳会談は実現するのか、両国は何を話すべきなのか

日中間に衝突回避、紛争拡大防止システムがない
日中首脳は危機感共有と危機回避へ備えるべき
――茅原郁生・拓殖大学名誉教授

茅原郁生 [拓殖大学名誉教授]
【第5回】 2014年10月6日
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かやはらいくお
1938年生まれ。山口県出身。防衛大学校(6期)卒。62年陸上自衛隊幹部任官、陸幕情報幕僚、連隊長、師団幕僚長等を経て、91年防衛研究所で文官研究職に転官(元陸将補)、同研究部長を経て99年3月に定年退官。この間、67〜69年拓殖大学へ国内留学、76〜78年 外務省(中国課)出向、97年 英ロンドン大学客員研究員など。99年4月に拓殖大学国際学部教授。専門は現代中国の政治・国際関係・安全保障。国際協力学科長、大学院:安全保障専攻主任教授など兼任、2009年 に定年退職。同年6月に名誉教授。現在は、防衛省オピニオンリーダー、日本防衛学会理事、日本安全保 障・危機管理学会・中国部会座長など。防衛省情報本部、幹部学校などの講師。内外情勢調査会、外務省などにも出講。著書に『中国軍事大国の原点—鄧小平の軍事改革研究』(蒼蒼社、2012.3、第24回 アジア・太平洋賞受賞)など著書多数。

 日中関係は今、厳しいせめぎ合いの中にあり、両国で新政権が発足して2年近く経過しながら首脳会談さえ開かれていない。そこには政治・外交面の“冷たい関係”に加えて両国のナショナリズムが関わり、国民意識の面でも相手に好感を抱かない回答が両国で90%を越える状態にある。

 日中間では関係改善を求める動きがありながら相互に不信感が残り、摩擦の接点である東シナ海でも危険な事態が繰り返されている。

 このような事態を踏まえて、日中首脳会談の開催可能性についての環境条件を探り、さらに、開催された場合はどのようなテーマが考えられるのかについて、安全保障の観点から検討してみたい。

日中両国の緊張状態は
二国間の問題を超えている

 今日の日中間の軋轢は、2011年9月11日に野田前政権による尖閣諸島一部の政府買い上げに中国が反発したことに端を発した。反日行動は中国各地で大規模デモの勃発や尖閣海域での国家海洋局公船による領海侵犯の反復など緊迫した状況となり、緊張事態は今日も続いている。

 この間に中国では国家海警局の新編など体制強化が進み、大型公船が投入されるなど緊迫度はいっそう高まり、領海侵犯も脱稿前までにすでに延べで96回に及んでいる。現に9月10には海警船4隻の久場島沖への領海侵犯があり、尖閣海域での中国漁船の操業は増加傾向にある。

 さらに東シナ海での緊張事態には軍事力も関わり始めている。2013年1月には東シナ海で中国海軍のフリゲート艦がわが護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射するという危険な行為があった。また同年秋に、中国は尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定し、14年5月27日からは東シナ海上空を飛行中の海空自衛隊哨戒機に対して、中国のSu27戦闘機などが30mまで接近するという危険でルール違反の行動が繰り返されている。

 このような国際法や国際慣例を無視するような中国の挑発的な行動は、日米安保条約に関わって米国を巻き込み、二国間の問題を超えてきた。実際、本年4月のオバマ大統領アジア歴訪時には、尖閣諸島有事に日米安保条約第5条の適用が明言されている。

 もう1つの日中間の懸案は2013年暮れの安倍晋三総理の靖国参拝である。靖国参拝が中国によって歴史問題に連動・拡大され、問題を複雑にしている。

 さらにこの問題はポツダム宣言受諾やサンフランシスコ条約による戦後秩序への挑戦と位置づけられ、国際的な運動にまで拡大されている。また、歴史問題という共通点から中国と韓国の連携強化が進み、近隣外交を阻害する事態になっている。同盟国である米国からも、中韓両国との改善を要請されているが、まったく進んでいない。

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どう中国と付き合うか 日中首脳会談は実現するのか、両国は何を話すべきなのか

今年で3回目となる日中関係を考える連載「どう中国と付き合うか」。今年は11月に中国北京でAPECが開催されることから、この機会を利用した日中首脳会談が開催されるかどうかは、早い時期から日中関係ウォッチャーの間で話題となっていた。しかし、両国の閣僚や政府筋の発言を見ていても、明確な関係修復の兆しは見られない。識者には「APECで日中首脳会談が開かれなければ、両国関係は本当にマズいことになる」という危機感が募る。果たして11月、安倍晋三首相と習近平国家主席は会談の席につくのか。席につかせるためには、両国はどのような努力をすべきなのか。日中の歴史、外交、防衛などの専門家に寄稿、インタビューから、その答えを探る。

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