ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
安東泰志の真・金融立国論

地域金融機関の経営統合は正しい選択か
静岡銀行、京都信金の取り組みにヒント

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第50回】 2014年10月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

現在、半ば金融庁が主導するような形で、地域金融機関の経営統合が進められそうな気配がある。しかし、地域金融機関にはメガバンクなど大手金融機関にはない、地域密着型経営という特徴があり、単に規模や拠点を増やせばいいというものでもない。経営統合の是非は微妙な判断を要する事項だ。地域金融機関の経営統合について考えてみよう

なぜ経営統合なのか

 近年、金融庁は地域金融機関の再編を促す姿勢を強めている。具体的には、昨年9月の検査・監督方針以降、地域金融機関のビジネスモデルの「持続性」を検証することを明言し始めており、去る9月6日に出された「平成25年事務年度 中小・地域金融機関向け監督方針」でも、冒頭部分で「急激な社会・経済の変化や国際規制の変更等にも対応するため、経営陣が責任ある経営判断を迅速に行う重要性が増している。同時に、各種のリスクを的確に把握した上で、5~10年後を見据えた中長期の経営戦略を検討することが重要である」と指摘している。

 確かに、地域金融機関が直面する「急激な社会・経済の変化」は止まるところを知らない。たとえば、(1)地方都市を中心に人口減が止まらないこと、(2)経済のグローバル化の結果として、地方に基盤のある製造業が海外企業との競争にさらされるようになっていること、(3)少し前までの円高局面で大企業が海外進出を進めてきたため、地域の下請け企業も海外進出を進めていること、(4)地銀と第二地銀だけで100行を越えるいわゆる「オーバーバンキング」であることに加え、メガバンクなどとの競争も激化しているため収益性が落ちてきていること、そして、なんといっても、(5)国内基準行の新たな自己資本規制の適用が開始されたことが、直接の引き金となりつつある。

 国内基準行の自己資本比率規制は、最低自己資本比率の水準自体については4%と従来と変わらないものの、自己資本の質について、普通株式や内部留保等「コア資本」と呼ばれるものに限られたため、劣後債(他の債務比べ返済順位の低い債券)や繰延税金資産など、これまで自己資本に算入できていたものが除外されることになり、従来基準と比べて格段に厳しくなった。経営統合を進めれば、店舗・人件費など経費の削減が進むことによって収益力が増す結果、内部留保も厚くできるため、自己資本比率規制の達成が容易になるかもしれない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

⇒バックナンバー一覧