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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

香港デモは譲歩を引き出せなくとも大きな意義
中国共産党が目指すのは日本の「自民党」か

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第91回】 2014年10月7日
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 香港政府トップである行政長官選挙の制度改革を巡る民主派のデモ活動は、10月3日に各地で殴り合いやつかみ合いが続発する事態に至った。親・中国政府派とみられる暴力団員風のグループが民主派を襲撃し、40人近くが負傷した。民主化学生団体は、梁振英行政長官との対話交渉を始めていたが、「当局は、暴力団や親中派の暴力と襲撃を許し、自ら対話の道を絶った」との声明を発表し、交渉の中断を表明した。その後、交渉自体は再開した模様だが、事態は予断を許さない状況だ。

 民主派のデモ活動は、9月26日に香港中文大の学生によって始められた。その目的は、香港のトップを選ぶ「2017年の行政長官選挙」の立候補者の資格に、中国政府が一定の制限を設ける決定をしたことへの抗議であった。

 香港は、「1国2制度」という原則の下、外交と国防を除き「高度の自治」を与えられ、行政長官は住民の普通(直接)選挙で選ばれることになっていた。だが、中国政府は行政長官選に出馬できる候補者を「北京派議員と財界指導者で構成される委員会で指名された者に限る」という決定を下した。これを香港民主派は「実質的に民主派候補を排除する仕組み」だと批判し、中国政府に対する抗議のデモ活動に入ったのである。

 デモ隊の学生リーダーらは、梁行政長官の辞任や「2017年の行政長官選挙」の制限撤回などを要求した。デモは数千人の学生や市民らを集め、週末の9月28日には、ビジネス街「中環(セントラル)」周縁の主要道路など幹線道路にデモ参加者が殺到した。香港中心部をデモ隊が選挙したことに対して、遂に警察がデモ隊排除のために催涙弾87発を発射した。デモ隊がこれにゴーグルを着用し、傘を開いて防御したことで、このデモは「雨傘革命」と呼ばれ始めた。

中国政府は香港民主派に譲歩しないが、
それでもデモには大きな意義がある

 中国政府は香港の民主化デモに一歩も退かない姿勢を貫いている。中国の三大紙「人民日報」「光明日報」「解放軍報」や「国営中央テレビ(CCTV)」に、デモを黙殺させることで、言論を統制し、諸外国のメディアと政府に対しても、「香港でどんなことが起きても、全国人民代表大会で決まった選挙方法を変えることはない」「香港は中国の内政問題であり、外国が誤ったメッセージを送らないように希望する」と牽制している。梁行政長官は、学生側との対話の要求には応じたが、「対話は香港基本法と中国側の決定を前提として進めなければならない」と発言し、中国政府の決定を受け入れるべきとの考えを変えていない。梁行政長官自身の辞職も拒否している。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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