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医療・介護 大転換

中流層から生活保護受給者まで利用者の幅が広がる
高齢者ケアの期待の星「サ高住」の現実

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第11回】 2014年10月8日
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 これまで10回にわたって、この4月から始まった医療改革と来年4月からの介護改革について論じてきた。いずれも急速な高齢化に対応した改革で、問題点を孕みながらも全体としては止むを得ない改善策だろう。

 だが、制度改定の度ごとに各種サービスが次々出現し、それに加算措置が加わり、利用者にとっては極めて分かり難い。何よりも長期的にどのような構図になるのかを厚労省が明示しないので、目指す先が不透明に見える。

 そこで今回は、厚労省が描いているであろう将来モデルを念頭に置きながら、欧州での視察体験を参考に、現状のサービスの中で、あるいはさらなる改革の可能性を踏まえて、あるべき高齢者医療と介護の理想像を考えてみる。

高齢者向け住宅「サ高住」をめぐる
国交省と厚労省の考えの相違

 まず、その柱となるのは住宅政策である。住宅を高齢者ケアの制度内に組み込んだ画期的な「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の登場だ。この制度を打ち出した法律は高齢者居住安定法。国交省の管轄である。国交省の管轄事業を厚労省の医療・介護と組み合わせようという発想は今までなかった。日本特有の霞が関の縦割り行政では、2つの役所が1つの事業で連携するのは極めてまれなことだ。

 というのも、国交省が描いたサ高住の解説図では、建物の一階に診療所や訪問介護事業所など医療保険と介護保険の指定事業者を組み込んでいた。「賃貸住宅に入居した高齢者にとって、同じ建物内に医療や介護の事業所があれば便利この上ない」という当たり前の発想に基づく。

 だが、厚労省の考え方は違っていた。建物の管理事業者が、建物内の要介護高齢者に医療や介護のサービスを提供するのは、利用者のサービス利用の選択肢を奪いかねない「囲い込み」にあたる、と批判してきた。

 この厚労省の「性悪説」に立つ考え方に対して、国交省は世間の「常識」で反論し、新たな仕組みを築いた。サ高住を広げるために、一室当たり100万円に及ぶ助成金を投入したほか、さまざまの助成措置や税の軽減措置を総動員する。

 所得税と法人税を5年間、40%の割増償却とするほか、固定資産税は3分の2に5年間軽減、不動産取得税も一戸当たり1200万円の控除を特例として認める。これにより1億円の土地を取得して、800平方メートルの敷地に900万円で建てた30室のサ高住は、5年間で1270万円の減税となる。もし特例がないと1647万円の各種税がかかるが、357万円で済むことになる。

 また、手元資金の不足分は住宅金融支援機構から融資を受けられる。

 2011年10月から新制度はスタートし、10年後に60万室という壮大な目標を掲げた。これによって日本で初めて要介護高齢者が自宅に代わる「第2の住まい」を得ることができた。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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