糖質制限食の認知度があがるにつれて何かと旗色が悪いお米。というより、米に代表される高GI食品群全般にいえるのだが。

 GIとは「グリセミック指数」の略で、食後の血糖値の上昇度を示す指標のこと。GIが高い食材ほど、食後に血糖値が上昇しやすく、予備群を含む2型糖尿病や動脈硬化を悪化させやすい。しかし、何事も一面だけで評価はできないもので、米には我々の健康に欠かせない良質の睡眠をサポートする力があるらしい。

 金沢医科大学の研究グループは、日本人男女(20~60歳)1858人を対象に、自己申告方式でGI値が異なる3種類の主食、すなわち米、パン、麺類の食事歴と睡眠の質との関連を調査した。この際、たとえば精製された米、麦飯、五分づき米、玄米などの詳細と(それぞれGI値が異なる)、食べた量も記録してもらった。

 その結果、高GI値の「ご飯」を食べるほど、良好な睡眠を得られることが示されたのだ。一方、麺類、たとえばそば、うどん、パスタの摂取量が増えると、睡眠の質が低下する傾向が明らかになった。パン食は白パン、全粒パンを問わず、睡眠との関係は見いだされなかった。また、高GI食ほど、お粗末な睡眠に悩むリスクを減らすことも示されている。

 先行研究では、米には気分を安定させる「セロトニン」や、睡眠ホルモンの「メラトニン」の材料であるトリプトファン(TRP)が含まれることが知られている。

 TRPは肉類などのタンパク質にも含まれるが、タンパク質内の他の栄養成分に邪魔をされて、合成先である脳に届きにくい。詳細は省くが、TRPが脳に供給されるには「糖質」の伴走が必要なのだ。高GI食品ほど睡眠の質が良くなる背景には、生体の基本的なメカニズムが隠れている。案外、食後のデザートも、その方が「よく眠れる」という経験則から生まれたのかもしれない。

 デザートの習慣がない日本人が良質の睡眠を得るには、1日1食はご飯を食べるとよいだろう。昼食もしくは夕食で充分だ。ただし、量はほどほどに。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)