ピクサー・アニメーション・スタジオ――。 『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』など、次々と大ヒット映画を世に送り出してきた「世界最高峰のアニメ制作会社」である。その伝説的な会社で活躍した日本人がいる。堤大介さん、39歳。「世界最高峰」の職場で求められることは何か? 前回に続き、話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社 田中 泰)
コミュニケーションこそが、
ピクサーの創造力の源
野球少年だった堤大介さんが、アメリカ留学でたまたま出会った「絵画」。
「残念だが、君には才能がない」と何度も言われながら、ずーーーっと描き続けることで「画力」を磨き、ピクサーで「光と色彩のアートディレクター」という職を手に入れた。
「光と色彩のアートディレクター」とは、監督が思い描くストーリーを踏まえながら、ワンシーンずつ「光と色彩」のビジュアル・イメージを作りあげ、それに基づいて約200人のCG製作スタッフをディレクションしていく仕事である。
これは、『モンスターズ・ユニバーシティ』で堤さんが描いたディレクション用のラフスケッチ。このスケッチが映像制作のもとになるのだから、「画力」はアートディレクターにとって重要な「武器」であることは間違いない。だからこそ、堤さんは、ピクサーに勤めるようになってからも、常にスケッチブックを持ち歩き、時間を見つけては絵を描き続けた。
しかし、堤さんは、それがこの仕事の本質ではないと言う。
「たしかに、画力はあったほうがいいんです。でも、映画づくりはチームプレイですから、ひとりで部屋にこもって、どんなに素晴らしい絵を描いても意味がありません。この仕事の本質はコミュニケーションにあります。実際、絵は苦手だけど活躍しているアートディレクターもたくさんいるんです」
まず重要なのが、監督とのコミュニケーションだ。