第3回:育児の経験が仕事にもプラスに!男性育業を推進するサッポロビールが目指す「ライフ」と「ワーク」のいい関係サッポロビール 内山夕香 取締役執行役員
「サッポロビールが提供したいのは、お酒そのものというより、お酒を通じて得られる楽しみや豊かさです」

育業をサポートした社員にボーナスを上乗せ!

サッポロビールが男性の育業取得率100%を達成したのは2023年。さらなる長期育業を促そうと、24年には、1カ月以上の育業を条件に、業務を引き継ぐ同僚にボーナスを加算する「休職職場応援ポイント制度」も導入した。

ユニークなのは「職場を応援するポイント」というコンセプトだ。具体的には、まず育業する社員の役職等級・不在期間に応じてポイントが設定される。このポイントが、育業した社員が所属する職場全体に割り当てられる。それを原資として、実際に業務を代行した割合に応じて個人にポイントが分配され、このポイント分の金額がボーナスに上乗せされるのだ。業務を代行するメンバーは自身が頑張った分、ボーナスを追加でもらうことができ、一方で、育業当事者は1カ月以上育業することで部内メンバーに還元できることから、長期育業をする一つのきっかけにつながっているという。また、この制度は出産・育児だけでなく、介護や病気による休業も対象となっている。

制度の狙いを、内山夕香取締役は「個人を対象にした手当としてではなく、変化に柔軟に対応するための原資として職場で活用してもらいたいと考えています」と語る。

確かに、職場の稼働人数が一時的に減ることも、「ビジネスの現場で起こり得る環境変化の一つ」といえる。

具体的な引き継ぎ人数やポイントの配分は、マネージャーが関係者間でミーティングしながら決めていく。少人数で引き継ぐか、多数で支援し合ったことで広く分担するか──。職場ごとに最適解はさまざまだが、いずれにせよ、付加される業務量や報酬がはっきり可視化されるため、これまで長期育業が難しかった営業職でも引き継ぎがスムーズになり、明るく育業に送り出す雰囲気につながった。

「そもそもサッポロビールが提供したいのは、お酒そのものというより、お酒を通じて得られる楽しみや豊かさです。そのためには、価値提供の主体である社員にも、仕事以外の楽しさや豊かさを感じる余裕が必要です。家族と過ごす時間をもっと大切にしてほしいし、それを仕事に生かしてほしい。また、引き継ぐ側の社員も成長の契機にしてほしい。そんな考え方が土台になっています」(内山取締役)

次ページでは、出生届を出した男性社員全員に送られる、人事部長からのダイレクトメールの中身を明かす。

※令和4年度に東京都が発表した育児休業の愛称。育児は「大切な仕事」を理念とする