大きな本屋に行くと、お金持ちになるためのノウハウや心がけを書いた本が多数並んでいる。そのなかで、一風変わった本を見つけた。荒木創造著『お金持ちになりたいなら性格を変えなさい』(ダイヤモンド社)がそれだ。

 お金持ちになるために性格や習慣が重要だと説く本はほかにもあるが、この本で特異なのはお金持ちをまったく美化していない点だ。

 著者は、お金持ちに共通な性格をありのままにわかりやすく伝えたと言うかもしれない。「あなたの中にもともと潜んでいる性格を活性化」(前書き)させればよいと言っており、ノウハウ本としては、ていねい、明瞭、かつ具体的に書かれている。しかし一方で、お金持ちになる方法を説明するかたちで、世の中のお金持ちが人間としていかに感じが悪いかを書いた確信犯的な皮肉の書ではないかという推測が捨て切れない。おそらく、両方をまじめに追究した結果がこの本なのだろう。読みようによって、本当にお金持ちになりたい人にも、お金持ちが大嫌いな人にも「役に立つ」不思議な実用書だ。

 著者は2つのことを言っている。

 まず、お金持ちになるためには、何にも勝る強い「目的」としておカネを追求しなければならない。「おカネというものは、自分の好きなことを頑張ってやっていて、それを成功させれば、自然についてくるような生やさしいものではない」と言うが、そのとおりだろう。

 証券の世界を見ても、おカネに対するモチベーションの強弱で証券マン個人のあいだには大きな差がついている。倫理や体面のうえで「汚い」仕事や、単純で興味のわきにくい仕事でも、「儲かる」という1点に喜びを見出して熱中できるような人が経済的には成功している。「熱意」は、セールスマンの成否を分ける、おそらく最大の要素だが、強い金銭欲はこれに直結する。また、「お互いのメリット」という建前を言いながら、実際には自分の利益のみを最大限に追求するような冷徹さも必要だ。