
11月18日、世界初となるトヨタ自動車の市販燃料電池車(FCV)「ミライ」が鳴り物入りでデビューする。
FCVとは、燃料電池で(水素と酸素の化学反応によって)作り出す電気を使って、モーターを回して走る自動車のことをいう。走行時に水しか出さないため、“究極のエコカー”と呼ばれる。ガソリンスタンドで燃料を補給するように、FCVは水素ステーションで燃料となる水素を充填する。
偶然なのかどうか。市販価格700万円(ユーザー負担額は500万円)、航続距離700キロメートル、初年販売台数700台と、「700」の数字が三つ並ぶ予定だ。年内にも、最初の1台が顧客の手元へ届くことになるだろう。
もっとも、世界初の市販と銘打ちながら、初年販売の700台が一般ユーザーの元へ渡る見込みはほぼゼロだ。FCV普及を目的に政治・行政・産業界と折衝するトヨタの技術統括部(渉外担当)には、700台の納品先リストが存在するという。
リストに名を連ねるのは、中央省庁、福岡県、九州大学といった水素・燃料電池の普及に熱心な自治体や教育機関、水素ステーション設置で連携する岩谷産業などの重要取引先、トヨタグループ関係会社などに限定されている。
トヨタには経験値がある。1997年にハイブリッド車(HEV)「プリウス」の発売当初に、バッテリーやシステム制御の不具合が頻発し、回収作業に追われたのだ。FCVは、燃費の良いガソリン車ともいえるHEVとは異なる、まったく新しいタイプの車だ。トヨタは、開発段階では突き止められない不具合が発生することも想定している。仮に何が起きても、速やかに対応・修繕できる範囲で販売することにしたのだ。