主力車種「フィット」のハイブリッド車などのリコール問題で揺れるホンダに、水面下で進んでいる提携話がある。11月にも、パナソニックと車載電池分野において協業する方向で可能性を模索している。これまで、ホンダは電池ではジーエス・ユアサコーポレーションとタッグを組んできたが、ここにきてパナソニックに軸足を移すのはなぜなのか。

 さかのぼること6年前、2008年秋のことだ。旧三洋電機(現パナソニック)の技術系幹部が、ホンダの四輪開発拠点の総本山である栃木研究所を訪れていた。

 訪問の目的は、経営危機に陥った三洋への出資をホンダにお願いすること。要するに、身売りの相談である。

 当時、三洋の大株主であった金融3社(米ゴールドマン・サックスグループ、大和証券SMBCグループ、三井住友銀行)は、自らの優先株式を放出するイグジット(出口戦略)として、パナソニックを引受先とするシナリオで動いていた。メインバンクが三洋と同じ三井住友銀行だったからだ。

6年越しの悲願か、遅過ぎた婚約か。旧三洋電機の技術の流れをくんだパナソニックとホンダが、ついにタッグを組む
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 門真のパナソニックと守口の三洋。本社こそ近けれど、両社の関係は良好だったとはいえない。あるホンダ関係者は、「パナソニックの軍門に降ることへの拒否感から、三洋技術陣はすがる思いでホンダへ話を持ち込んだ」と振り返る。パナソニックの背後には、その重要顧客であるトヨタ自動車の影もちらつき、開発現場の自由度が奪われかねない買収スキームに反旗を翻したのだ。

 一方で、三洋電池部門とホンダとのビジネス上の結びつきは強かった。早くから、三洋はホンダをはじめ、独フォルクスワーゲン、米フォード・モーターといった完成車メーカーと、個別に車載電池の共同開発を行っていたからだ。

 ところがこの時、すでにホンダにはジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)という“婚約者”がいた。間もなくして、08年11月にパナソニックが三洋を買収することで基本合意し、同年12月にホンダとGSユアサがリチウムイオン電池分野で提携したのは周知の事実である。ホンダによる三洋買収話は幻と消えた。

 三洋出身の技術陣からすれば、6年越しの悲願がかなったと言うべきか。遅過ぎた婚約だと言うべきか。この11月にも、ホンダとパナソニックは、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)の車載電池分野において、広範な提携を締結する。