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外科医のつぶやき

救命治療は「お客様感覚」では救えない

柴田 高
【第6回】

 大学外科医局に入局して10日目のこと、術後患者さんの造影検査を見学していたとき、医局長がやってきた。

 「今年から1人S救命救急センターへ行ってもらいます。希望する人はいませんか」と声がかかった。目の前の患者さんの命を助けることができる救命救急医療を何よりも早く習得したい思いから、「希望します」と即答した私は、7日後、S救命救急センターのユニフォームを着て、看護師さんの指導のもと患者さんの尿量を測定していた。

 S救命救急センターは、まだ産声をあげたばかりだった。大学付属病院以外の救命救急は珍しかった当時、重症患者のたらいまわしが発端で、最先端の公的救急施設として鳴り物入りで開設されたのだ。

 救命救急センターの医師の仕事は3つに分かれる。まず、昼夜を問わず、救急隊からの連絡を受け、救命救急患者かどうかを判断したり、搬送された患者の蘇生を行いながら、初期診療や緊急手術を行う業務。さらにICUといわれる重症管理ユニットで生命維持のための投薬や処置を看護師さんとともに張り付いて行う指示管理業務。そして救命し急性期を乗り越えた患者さんを、一般病棟で収容し治療する業務である。

 卒後5年前後の救命救急の専門スタッフと研修医2人が1チームで、原則24時間、救急搬送された患者のすべてを担当する。

 救命救急は命を救うという専門科であり、新生児や産婦人科の救急、脳出血、心筋梗塞、多発外傷、脊椎損傷、内臓破裂、多臓器不全など、ありとあらゆる急変患者が運び込まれる。ときには刑事事件被害者や他の病院での手術後患者、夜間発狂し自殺を図る精神病患者も運ばれてくる。S救命救急センターはまさに大阪北摂地域の命の砦だった。

 「この施設は命を救う戦場です。君たちは運ばれてきた患者さんのすべてに対して、一切私情を挟まず、体を張って救命治療を行ってください」とO所長はいう。もちろん、犯罪者や自殺未遂者であろうと、患者さんを差別はしないし、救命処置に患者さんのバックグラウンドを検討している余地はない。

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柴田 高

川崎医科大学卒業後、大阪大学論文博士課程修了。日本外科学会指導医。日本消化器外科学会専門医。現在は大幸薬品社長。著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』がある。


外科医のつぶやき

現在は製薬会社役員である外科医師による医療エッセイ。患者の知らない医師の世界。病院の内側が覗ける、ここだけの話が満載。

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