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魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

熊本発のブランド魚「田浦銀太刀」は
いかに無名時代を乗り越え“スター”になったか

池田陽子 [食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]
【第2回】 2014年11月10日
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スーパーではなかなか見ることができないタチウオの全身!これを見ると 「太刀魚」という名前を実感できる

 細長い身体、銀色に煌めきながら、まるで侍が日本刀をかまえたように「立って」泳ぐタチウオ。料亭や割烹のメニューで重宝される高級魚は、都心のスーパーでその姿を見かけることは少ないが、熊本ではなじみが深い。県を代表する地魚として熊本県が選定した「くまもと四季のさかな」でもあり、漁獲量も多く沿岸部では昔から日常的によく食べられている。

 熊本県南部の芦北町に位置し、八代海が育んだ海の幸が水揚げされる田浦漁港。芦北町漁業協同組合田浦支所では、一匹一匹ていねいに釣ったタチウオの中から、選り抜きのものを「田浦銀太刀」と名付けたブランド魚として販売し、注目を集めている。

 「田浦支所の3分の1の漁船がタチウオ専門。昔からこのあたりは、タチウオ漁が盛んです」と芦北町漁業協同組合田浦支所(旧・田浦漁業協同組合。2013年に芦北漁業協同組合と合併)の野口修さんは語る。

 「通称『不知火海』とよばれる八代海は、九州本土と天草の島々に囲まれたおだやかな内海。温暖な気候、山から大地を巡り流れ込む球磨川水系から運ばれた恵みで、栄養豊かな水質のため、魚介類のエサとなる小魚などの生物が多いんです。豊富な餌を食べて立派なタチウオが育つんですよ」

 肉厚で身がしまり、脂がのった田浦のタチウオ。「そりゃあもう、地元の漁師は絶対の自信を持っていますよ。よそのタチウオより、田浦のタチウオは美味しかけんね」と野口さんは胸を張る。

 しかし、それほどまでに漁師たちが誇る田浦のタチウオは、残念なほど認知されていなかった。九州で主にタチウオの産地とされている、長崎や大分に比べると知られていないばかりか、その価格はとんでもなく差があったのだ。

 「こぎゃん旨くて上質な、田浦のタチウオが安いのはおかしか」

 組合員たちが、田浦のタチウオの実力をアピールするために立ち上がった。2002年、田浦のタチウオをブランド化することを決めたのだ。

ブランド化は「キラキラ」の徹底から始まった

 ブランド化をするならばと、まずは、タチウオの徹底した品質管理を目指すことになった。

 タチウオの場合、「見た目」もブランド魚として大切なポイントになる。タチウオならではの「キラキラ」。この美しい銀色の輝きを維持することが必要になってくる。タチウオは魚界における「ビジュアル系」なのだ。

 鱗のないタチウオは、そのまま皮ごと刺身にできるので、その銀色に光る美しさは料理の華やかさも醸し出す。巻き網で釣られた場合は、この銀色が剥がれ落ちていることがほとんどだが、一本釣りは味の良さだけでなく、その美しさからも高値で扱われるのだ。

 しかし、この「キラキラ」が厄介な代物。鱗がないタチウオの身体を覆う銀箔は模造真珠や銀紙、マニキュアのラメなどにも使われるグアニンという物質。どこかに体表がぶつかれば、あっという間に変色しシワがよる。迂闊に手で触ろうものなら、勝手に“指紋捺印”状態。扱いがとても大変なのだ。

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池田陽子[食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]

宮崎生まれ、大阪育ちのアラフォー。立教大学卒業後、出版社にて女性誌、ムック、機内誌などの編集を手がける。取材を通して、カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは?という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。自身の体調の改善、美容効果などをふまえてふだんの暮らしの中で手軽に取り入れられる薬膳の提案や、漢方の知恵をいかしたアドバイスを、執筆、講習会などを通して行う。また、日本各地の食材を薬膳的観点から紹介する活動も積極的に取り組み、食材の新たな魅力を提案、発信を続け、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。著書に「ゆる薬膳。」(日本文芸社)「缶詰deゆる薬膳。」(宝島社)、「『ゆる薬膳。』はじめたらするっと5kgヤセました!」(青春出版社)などがある。
■HP:www.yuruyakuzen.com
■Facebook:https://www.facebook.com/yoko.ikeda.79

また、鯖をこよなく愛し、日本全国・世界のさば、さば料理、さば缶を楽しみ、さば文化を語り、さばカルチャーを発信し、さばで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動している「全さば連」(全日本さば連合会)にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。
■全さば連HP:http://all38.com
■FACEBOOKページ:http://www.facebook.com/mackerel.cava  

 


魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

和食が世界遺産に認定され、改めて見直される「魚食文化」。日本各地にはさまざまなおいしい魚が水揚げされ、地元ならではの「魚料理」があります。この連載では日本各地の各種魚の産地を訪ね、「とっておきの漁師料理/ご家庭の魚料理/ご当地魚グルメ」を紹介。あわせて漁の様子、市場の風景など、おいしい「浜のめし」を支える人々の活躍をお届けします。

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