「やりたいこと」をやるなら、それはすべて「成功」だ

 以前、一人の日本人の青年が起業の相談に来ました。

 何でも、学生時代に世界各国を旅して身につけた「究極のカレー」をつくる技術を活かして、ケニアの首都ナイロビに「世界一のカレーパンの店を出したい」というのです。

 英語も大してできない。ビジネスもやったことがない。しかも、何の縁もゆかりもないナイロビで、なぜかカレーパンの店を出したいという。彼があふれんばかりの熱意を込めて100人にビジネスプランを話しても、おそらく100人全員が「ムリだろう」と判断したでしょう。

 それでも、私はあえて止めませんでした。

 なぜカレーパンなのか。なぜナイロビなのか。疑問点はいくつもありましたが、そういうことはいっさい問わずに、「応援するから、やってみなさい」と背中を押したのです。

 こうして、日本人による初めてのカレーパンとカレーライスの店がナイロビにオープンしましたが、結果からいうと、売上が足らず家賃が払えなくなったという理由で1年後に閉店しました。要するに失敗したわけです。

 ですが、閉店から1年ほどして彼と再会した時、私は彼のチャレンジが「成功」だったのだと感じました。

 ドバイ空港で、「佐藤さ~ん!」と大きな声で私の名前を呼びながら駆けてくる彼の顔は、本当に晴れ晴れしていたのです。やりたいことをやりきっている人の、突き抜けるような明るさ。それを見た時、「ああ、やってよかったんだな」と思いました。結局、彼は、カレーパンの店を閉めて日本に帰国したのち商社に就職、再会した時はちょうど、社長と一緒にヨーロッパ出張から帰るところだったそうです。