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田中均の「世界を見る眼」

北京APECでの中国の意図を読み解く
アジア新秩序に向けた日米の戦略は?

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第38回】 2014年11月19日
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新興大国の威信をかけたAPEC首脳会議
アジア太平洋の新秩序と「新型の大国関係」

 先日中国が主催したAPEC首脳会議は、国際社会の変動を象徴した会合と言ってもよいのかもしれない。世界、とりわけアジア太平洋の相対的な力のバランスの変化を如実に示した。

 また、この機会に2年半ぶりに開かれた日中首脳会談は、周辺国のみならず米国や欧州を含む世界に一定の安心感を与えたことは間違いがない。日中首脳会談がどのような意味合いを持ったものなのかを含め、今回のAPEC首脳会議の背景を読み説いてみたいと思う。

 習近平国家主席の最大の目標は、中国がイニシアティブをとる形で地域の秩序をつくっていくことと、新興大国である中国が米国と肩を並べる関係にあることを示すことにあり、これを国内外に喧伝することにあったのだろう。

 今回中国は、APEC首脳会議を開催するにあたり、北京オリンピック並みの力の入れようであった。開催期間中は大気汚染と交通渋滞の緩和のために、周辺工場を一時的に操業停止させ、車両通行規制も厳格に実施し、北京市内の公的機関には休業を命じた。

 国際会議の成功は国の威信にかかわると捉えるのは、中国だけではない。日本も初めて議長国となった1995年の大阪APECサミットや、1979年の東京G7サミットの成功には、準備に準備を重ねて望んだ。今回中国にとっては、新興大国の勢いを示す上でも特別な意味合いがあったのだろう。

 中国は今年に入ってからAPEC首脳会議に至るまでの間、「アジアの新安全保障観」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」「シルクロード基金」など新たな地域秩序に関する構想を次々に発表した。

 また貿易面においても、TPPがAPEC首脳会議までに合意されていれば明らかに状況がかわっていたと思われるが、合意されなかったことに乗じて、中国はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の交渉開始と2025年までの合意目標を、APEC首脳会議後の共同声明に明確に盛り込もうとした(結果的には盛り込まれなかった)。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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