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湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】

ツキ板製造の三代目、創業来の不況に直面
飛行機や電車に次ぐ用途開発で巻き返しへ

――北三社長 尾山信一

湯谷昇羊 [経済ジャーナリスト]
【第4回】 2009年12月3日
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ホテルの内装やクルマの内装に、美しい木目をした材料が使われるのをみることは多いだろう。実はこの材料は天然の原木に様々な加工を施し、極めて薄くスライスしたものでツキ板と呼ばれる。北三はそのツキ板の製造・販売で日本を代表する企業だ。社長の尾山信一は創業以来の苦難に直面しているが、技術革新による用途拡大で巻き返しを図る。

不況が直撃!
やむなく社内体制縮小へ

尾山信一
北三 尾山信一社長

 ツキ板の老舗企業の北三が今、逆境に立ち向かっている。5年前に社長に就任した尾山信一(57歳)は、「リーマンショック後の世界的不況で、売上は厳しい。装飾材料は高級分野であり、取引先の購買意欲の低下が背景にある」と眉を曇らせる。オイルショック時もマーケットは右肩上がり、バブル崩壊時でも、すべての分野が悪かったわけではなく、カバーしてくれた分野があった。しかし、今回はすべて悪いという。

 マーケットが縮小するなか、社内体制の縮小も避けられなかった。ベテランを含む社員の退職については、この仕事は経験と技術が物を言うだけに、「辛い思いで決断した」と尾山は語る。

「世界に広がるネットワーク」と
「最高水準の技術力」が北三の強み

 尾山の社会人1年生は商社の木材関連子会社だった。北三の社長の息子だっただけに、修行の意味があったのだろう。ボルネオでの1年間の駐在経験などを経て、2年で退社、その後1年の会計事務所勤めをしたあと北三に入社した。

 北三の強みは、世界中の原木を調査・買付けするために構築した独自のネットワークを持っていること。また、原木の表面を見ただけで、銘木としての価値を判断できるエキスパートの社員を多く抱えていること。さらに、独自の超薄板切削技術により、板厚0.1ミリを実現するなど業界最高水準の技術力にある。そして原木の調達から物流、製造加工から販売と一貫して行なっているところに特徴がある。

 もともと同社は、現社長・尾山信一の祖父である尾山金松が、北海道・北見で履物屋を開業。下駄の材料を求めて山に入ったとき、北海道を代表する樹・タモの切り株を見つけ、手斧でそれを削ってみると、息を呑むほど美しい木目が現れた。朽ちるにまかせている切り株に、こんなに美しい模様がある。これを生かす道はないか、と考えて下駄に貼付けてみたのが創業のきっかけだ。1918(大正7)年のことである。

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湯谷昇羊 [経済ジャーナリスト]

経済ジャーナリスト。鳥取市出身、1952年生まれ。法政大学経済学部卒業。1986年にダイヤモンド社入社、2004年週刊ダイヤモンド編集長。2007年営業局長兼論説委員、同年取締役。2008年同社退社。2000年に立命館大学客員教授として教鞭をとる。主な著書に、「迷走する銀行」、「生保危機の真実」、「会社再建」、「立石一真評伝 『できません』と云うな」(いずれもダイヤモンド社刊)、「サムライカード、世界へ」(文春新書)などがある。最新刊は『巨龍に挑む 中国の流通を変えたイトーヨーカ堂のサムライたち』(ダイヤモンド社刊)。


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