物価上昇に賃金の伸びが追い付かず、実質賃金の低下が家計を直撃した。アベノミクスでわれわれの生活は豊かになったのか。
株価が上がっただけで、人々の生活は良くなっていない──。それを示したのが図3‐7の実質賃金のグラフだ。実質賃金(名目賃金を物価上昇率で割ったもの)は2013年7月以降、15カ月連続して10年の水準を下回っている。
図3‐6は、コアCPI(生鮮食料品を除いた消費者物価の対前年比上昇率)と1人当たり・時間当たり賃金のグラフを並べたものだが、安倍政権発足後の点線以降の推移を見てほしい。これまでのような物価上昇トレンドと賃金トレンドの相似が壊れ、賃金の伸びが物価上昇に追い付いていないことが見て取れる。
「第3の矢である成長戦略が打ち出せていないため、企業の設備投資や雇用環境の改善、賃金上昇につながっていない」とバークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは指摘する。
実質賃金の低下は、消費者の財布のひもを固くし、GDPの約6割を占める個人消費の低迷につながる。実際、今年4月の消費税率の8%への引き上げの影響もあり、4~6月期の実質GDP成長率は年率換算でマイナス7.1%、7~9月期も同マイナス1.6%となった。