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発症リスクか美か──
米国で両側乳房切除術が増加

井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-
【第228回】

 日本女性の12人に1人(約8%)が罹患する乳がん。2013年に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが「予防的乳房切除術」を受けた体験を公表したのは記憶に新しい。

 日本乳癌学会によれば、がん抑制遺伝子の「BRCA1/2」に異常を持つ女性が乳がんを発症する率は45~60%と高い。しかし、予防的な乳房切除術で発症リスクはほぼ消失する。ただ、同じ遺伝子異常が原因とされる「卵巣がん」の発症リスクを取り除くには至らないことは留意すべきだろう。

 乳がんを発症しないうちの切除術には、さすがの米国でも賛否両論あるが、片方の乳房にがんが発症した時点で両方の乳房切除に踏み切る女性は少なくない。

 米国在住の120万人超の乳がん患者の治療データ(対象期間は1998~2011年)を基にした調査によると、片方の乳がんの治療とともに、もう一方の切除術を行った女性は98年の1.9%から、11年の11.2%と、およそ6倍に増加した。家族性乳がんリスクの知識が広まったこともあるが、切除後に残った皮ふを伸ばして、インプラントを挿入する乳房再建術が普及したことが大きいと考えられる。

 また、この調査からは近年の米国の乳がん治療のトレンドが「リスクは徹底して排除する」だということが読み取れる。例えば、乳房温存術が可能な早期乳がん(0~2期)でも、切除術を選択する女性の比率が98年の34.3%から11年の37.8%に上昇。ことに最近8年間の上昇率は34%と高く、がん細胞が乳管内にとどまる「超早期乳がん」に至っては切除術を選ぶ人が2倍に増えた。そして、前述の乳房再建術は11.6%から36.4%に増加している。

 日本では、ようやく13年にインプラントを使った乳房再建術が保険適用された。美容面の不安が解消されたことで乳房切除術への抵抗が減り、予防的切除術への関心が高まるかもしれない。

 おそらく、予防的切除術に対する最大のハードルは配偶者である。アンジーの夫のブラッド・ピット氏は、妻の決断を支持してくれました。さて、貴方は?

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 

週刊ダイヤモンド編集部


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