財政再建に関する議論は、通常は基礎的財政収支(プライマリーバランス)に関して行なわれている。これは、国債に関連する収支を除外した収支だ。政府の試算によれば、2020年度までの黒字化目標の達成は困難なものの、さして深刻な問題が発生することにはならない。
しかし、財政に関する本当の問題は、基礎的財政収支の外で発生する。すなわち、国債の利払い費が増大し、それを国債増発で賄うことによって、財政赤字が雪だるま式に増大する可能性があるのだ。
以下では、政府の試算で公債残高の対GDP比が徐々に低下するのは、金利とGDPに関して都合のよい仮定が置かれているためであること、また、真の問題は試算が示す時期(2023年度)以後に生じることを指摘する。
問題は基礎的財政収支の外で発生する
本連載ですでに述べたように、基礎的財政収支に関する限り、2020年度頃までの政府試算(「中長期の経済財政に関する試算」平成26年1月20日、以下「試算」)に示されている結果は、さほど無理のあるものではない。すなわち、そこで想定された名目GDPの成長を前提にする限り、税収伸びの想定は妥当だし、歳出伸びの想定も妥当と考えられる。もちろん、想定した成長率が達成できなければ、税収は減る。他方で歳出は伸び続けるだろう。また、年金のマクロ経済スライドも発動できない可能性もある。こうしたことになれば、基礎的財政収支は悪化するだろう。
ただし、それより重要な問題は、基礎的財政収支の外で発生するのである。
すなわち、国債残高がすでに巨額であるため、金利が高騰すると国債の利払い費が急増するのだ。それを賄うために国債を発行すると、雪だるま式に国債残高が膨れ上がり、財政が破たんする危険がある(注1)。
金利上昇により国債費が増加し、そのため財政赤字が拡大する状況は、「試算」でも示されている。
「経済再生ケース」で国の一般会計について見ると、14年度から20年度の期間では、基礎的財政収支対象経費が11.4兆円増加するのに対して、国債費は17.6兆円増加する。20年度から23年度の期間では、基礎的財政収支対象経費は6.2兆円しか増加しないが、国債費はわずか3年間で13.1兆円も増加する。このように、国債費の増加は著しく、他のあらゆる経費の増加を上回る。
この結果、歳出と税収等との差額は、14年度から20年度の間に約10兆円増える。そして20年度から23年度には、さらに約10兆円増える。わずか3年で10兆円も増えてしまうのだ。これを賄うには、基本的には国債発行によらざるをえないだろう。
こうした状況に国債市場が対応できるのか、あるいは日銀による国債購入をこの時点になっても続けざるをえないのか、まったく見当がつかない。