時間の読めない「病院帰り」需要に
フルデマンドで対応したコガソフト

 配車ソフトを練り上げて効率性を高めているのが、東京のコガソフトウェアだ。同社が独自開発した「孝行デマンドバス」というシステムは、予約を締め切った後でも飛び込みの依頼に対応できる柔軟性の高さで、韓国を含む7つの自治体に採用されてきた。

 デマンド交通で利用者泣かせなのが、帰りの便の予約だ。買い物や役所ならまだいいが、病院は終わる時間が読みづらく、予約必須のデマンド便が使えずやむなくタクシーで帰る人も多い。

 岡山県玉野市は瀬戸内国際芸術祭等の主会場となっている直島、小豆島、高松へのフェリー航路が発着する港町であり、近年、高齢化も進んでいる。ここで「孝行」システムを利用した「シータク」が運行されている。

 タクシーやワゴン車で運行する5路線が市内全域をカバーし、各路線とも7~17時の毎時に便設定があり、運賃は200円。ただし可児市と違ってルートが上り下りの固定ではなく、依頼に応じて各利用者の乗降停留所を一筆書きでなぞるように走る、より複雑な設定だ。

「孝行デマンドバス」は予約希望の入力や最適ルートの算出をサポートしてくれる。シータクはタクシー会社3社で運行しているが、コールセンターのオペレーターが2~3名体制ですべてを処理し、1時間の便ごとに配車ルートを確定する。便確定後にFAXやメールで送っていた配車表も、クラウド経由で車載端末に送信できるようになった。

 シータクの予約締め切りは1時間前。そうして便が確定しても、発車まではまだ1時間ある。その間に「今病院が終わったので乗りたい」などの依頼が入り、決まっている配車のいずれかの便と乗合が可能であれば、そこに新たな予約を挿入する。この病院帰りの予約は、システムが自動で配車ルート候補を提示する。これによって急な予約にも対応しやすくなる。

 いわば、毎時のダイヤで運行する便はセミデマンド。その締め切り後に予約を随時挿入するのはフルデマンド。その両方に対応可能な唯一のハイブリッドデマンド・システムだとコガソフトは胸を張る。玉野市では「孝行」システムの導入により、予約の受付や便ごとの配車、日報作成など、業務の所要時間を半分ほどに短縮できたという。

 デマンド交通はタクシーより難しい配車をバスの料金でやらねばならない。そこに困難さの本質がある。東京都心ほどの需要規模があれば相乗りの事業化は可能かもしれない。だが、相乗り客のために10分待つ時間があれば、地下鉄の駅まで歩いた方が早い。

 100円、200円の料金を取っても雀の涙なので、いっそ無料化してどんどん使ってもらおうという自治体もある。三重県玉城町はデマンド交通を無料運行し、おかげで介護予防事業への参加者が年間約500人から約3500人に激増した。それが医療費・介護費用の削減につながれば、年間2000万円ほどの運行費がまかなえる可能性もある。

 民間主導で商店街を活性化しようという動きもある。福島県いわき市では、自治体が介入しない民間運営型デマンド交通として、「孝行デマンドバス」を使った実証運行が行われている。2013年度にはスーパー「マルト高坂店」で、送迎バス利用者の消費額を分析したところ、一部の利用者においては消費額が前年比2倍であったという成果が出ている。「(マイクロバスなら)荷物の量を気にせずに買えるから」という利用者の声がその裏付けになる。

「生活交通を地域住民や企業が担っていくことで、過度な自治体負担を抑えるとともに、健康増進や新しい産業が生まれることを目指しています」(コガソフトウェアの藤田芳寛氏)

 このように、健康増進や商店街の活性化という副次的効果も考慮した都市計画の一環としてとらえれば、デマンド交通の新たな意義も見えてくるかもしれない。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)