日本の労働生産性が低いといわれて久しい。その原因の一つは間違いなく、会議の乱用にある。会議に出れば仕事をしている感があるが、その時間が実は自らの生産性を著しく下げていることに気づくはず。グローバル企業から日本企業に転身した西口一希・ロート製薬執行役員は「定例会議の80%は無駄である」と喝破、生産性向上の第一歩として、会議全廃を推進する。

意思決定のスローダウン

「定例会議の80%は無駄である」というものの、決してコミュニケーションを否定して、孤独に仕事しようというわけではありません。人と人が顔を合わせて議論するメリットは十分わかります。思考が深まり、よりよいアイデアが出ることも経験しましたし、運用次第でアウトプットは大きく変わります。

西口一希(にしぐち・かずき)
ロート製薬 執行役員

1990年大阪大学経済学部卒業、P&Gマーケティング本部入社、ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを経て、2006年ロート製薬に入社。肌ラボ、オバジ、OXY、デオウ、目薬など、ビューティ-&ヘルスケア分野で40以上のブランドを担当。GAISHIKEI LEADERSのサポートメンバーとしても活躍する。

 問題は、「会議ありきの組織運営」。それが目的化して、生産性を蝕む課題の温床になっているのです。

 そもそもの目的が何であれ会議が定例化すると、そこが意思決定の場となり、会議を「待つ姿勢」を組織内に生み出します。結果、現場は即対応すべき課題の解決を先延ばしして、次の会議を待つようになる。こうして意思決定のスローダウンが組織に蔓延します。

 それは、戦争中、目の前の敵に対して攻撃すべきか撤退すべきかの意思決定を来週の幹部会議の議題に挙げるようなものです。現場で課題や機会が見えた「今」こそが、真剣に考えてアクションを決定し、実行するタイミングです。ところが会議が定例化すればするほど、課題に対するアクション策定も実行スピードも落ちます。

 また、会議は成長のチャンスも奪います。目の前に課題があり、自分で考え、意思決定し、アクションを起こして、責任を取らざるを得ない待ったなしの「修羅場」こそ、個人の成長にとって非常に重要な経験なのですが、会議が逃げ道となり、成長の機会となるべき「修羅場」を現場から奪ってしまうのです。

職務責任のレベルダウン

 そうした思考様式が常態化すると、それぞれの職務レベルが自らの意思決定事項を棚上げにします。自分で処すべき事柄を上長が参加する会議に持ち込み判断を仰ぐのです。