ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 緊急連載・アベノミクス最後の博打

円安で輸出が増えて貿易赤字も減るという
経済学の教科書通りにならない理由

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第8回】 2015年1月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

貿易赤字が拡大し、
所得収支黒字が増大する

 「国際収支の推移」(2014年11月速報)が15年1月13日に公表された。それによると、11月の経常収支は9145億円の黒字となった。13年11月から14年3月まで、13年12月を除くと赤字だったのだが、4月以降は黒字になり、10月には9000億円を超えていた。その傾向が11月も続いているわけだ。

 経常収支の黒字が復活した原因は、図表1に見るように、貿易赤字が減少したことと、所得収支黒字が増加したことだ。

 仮に12月の経常収支が11月と同じだとすると、14年の経常黒字は2兆6884億円になる。

 過去を振り返ると、日本の経常収支は、11年までは、年間10兆円を越す黒字であった。なかでも、04年から07年までと10年は、20兆円近い黒字であった。12年以降それが急減した。その後も黒字額は減っている。

 14年の黒字も13年よりは減るが、黒字自体は維持されているわけだ(なお、原油価格の下落により、14年の黒字は2兆6884億円より増加する可能性もある)。「貿易サービス収支は赤字だが、所得収支の黒字がそれを補い、経常収支は黒字になる」という構造は、現在に至るまで維持されていることになる。

 経常収支が黒字であれば、対外純資産は増え続け、所得収支の黒字は増大し続ける。したがって、この構造は今後も継続するだろう。

 なお、14年の所得収支黒字(推計値)は、13年に比べて11.5%増、12年に比べて30.0%増となっている。このほとんどは、対外資産の収益の円換算値が円安によって増加した効果と考えられる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 緊急連載・アベノミクス最後の博打

アベノミクスのメカニズムは、「金融緩和を行なう」という宣言によって、円安への投機を煽ることだ。円安によって輸出産業は潤うが、実体経済は改善していない。実際は、円安が経済成長率を抑えている。これは、アベノミクスの基本が間違っていることを示している。

「野口悠紀雄 緊急連載・アベノミクス最後の博打」

⇒バックナンバー一覧