ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
出口治明の提言:日本の優先順位

歴史はなぜ重要なのか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第134回】 2015年1月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 今年は、第2次世界大戦でわが国が敗北してからちょうど70年の節目に当たる年である。天皇陛下は、新年に当たり次のようなご感想を述べられた。

 「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。」

 誠に陛下のおっしゃる通りであろう。近隣諸国との関係ひとつを考えても歴史を学ぶことの重要性は言うまでもないことである。今回は歴史について考えてみたい。

歴史は1つである

 まず、歴史とは何だろうか。それは過去に起こった出来事をできるだけ正確に再現しようとする試みに他ならない。例えばとある要人が演説を行ったとする。それを聴いた何人かの人がメモを取る。そのメモが1次資料である。しかし、メモの内容は聴く人の価値観や興味、あるいは知識のレベルなどさまざまな要因によってかなりの程度異なってくる。従っていくつかのメモが利用できたとしても、要人の演説を正確に再現することはなかなか難しい。1次資料がなく、2次資料(演説を直接聴いた人からの伝聞を間接的に記録したものなど)しか利用できない場合は尚更である。

 しかし何かの偶然で、例えば演説の録音テープのようなもの(物証)が見つかれば、演説の再現に限りなく近づくことができる。歴史とは、つまり、このようなものである。人文科学、自然科学を問わずあらゆる学問の方法論を駆使して、過去に起こった出来事(1つの真実)に少しでも接近しようという営為を歴史と呼ぶのだ。要するに歴史は1つなのだ。

 その意味では、歴史学と物理学との間に大差はない。このように考えれば歴史は決して文科系の学問でないことが容易に想像されよう。歴史は総合科学であって、日々進化していくものなのだ。学問の進歩によって日々新しい事実や知見が付け加えられ、1つの姿(真実)がより鮮明に、あるいは以前とは違った姿で見えてくるのが歴史というものなのだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

⇒バックナンバー一覧