池上彰氏池上彰氏 写真:つのだよしお/アフロ

あっという間に迎える50歳という節目。生きるとは何か、人生とは何なのかと、これからの身の振り方を考えざるを得ない時期でもある。「残りの人生、このままでいいのか」と悩んでしまう“中年危機”に陥った時にこそ、「教養」が役立つというが――。※本稿は、池上彰『50歳から何を学ぶか 賢く生きる「教養の身につけ方」』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

「中年危機」にこそ
教養が役立つ理由

 私は54歳の時にNHKを早期退職し、本を書く生活に入るつもりだったのですが、テレビでニュースを解説する仕事が増えてしまいました。これには自分でも驚いたのですが、50代という節目は、誰にとってもこれからの身の振り方を改めて考えざるを得ない時期でもあります。「残りの人生を、どう生きるべきか」に思いを馳せざるを得ないからです。

 最近では、「ミッドライフ・クライシス」という言葉も耳にするようになりました。

 ミッドライフ・クライシスとは「中年危機」を意味するもので、人生の折り返し地点を迎えた50代前後の人々が、心身の衰えを含むさまざまな理由から自分のこれまでの人生やその先の人生に不安を抱えてしまう心理状態を指します。

 確かに、人生は後半戦に入っていき、季節で言えば秋から冬、1日で言えば昼過ぎから夕方、そして夜を迎える時期に向かっていきます。

 その中で、「子供が自立するまでは、とがむしゃらに走ってきたけれど、いったい自分の人生はなんだったんだろうか」「残りの人生で、いったい何ができるのか」「いつまで働かなければならないのか」「このままでいいのか」と思い悩んでしまう。