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失敗は「そこ」からはじまる
【第5回】 2015年1月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
フランチェスカ・ジーノ,柴田裕之

ディズニーで学んだ、
離職率を60%下げる新人研修の方法

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 「あんなに研修を受けさせたのに、すぐに辞められてしまった……」
多くの企業が、離職率を下げようと日々努力していると思います。しかし、研修を受けさせたり、福利厚生をよくしたりしても、よい人材が定着しない、というのはよく聞く話。
『失敗は「そこ」からはじまる』でこの疑問に答えた、研究者にしてコンサルタントが、ディズニーが新人を使命に忠実で知識豊かな人材に変える手法に着目し、どうすれば会社と新人両者にとって「よい選択肢」を提示できるようになるか、解き明かします。

 御社の研修とディズニーの研修を分かつものとは?

 潜在的な報酬やインセンティブや選択肢のフレーミングは、その報酬などを手に入れようという意欲に影響を及ぼすが、普通私たちはこのようなフレーミングの効果に気づかない。どれぐらい頻繁に洗車するか、あるいは何時間仕事に費やしたいかなどについて明確な計画があったとしても、脱線してしまうことがある。もらえそうな報酬のフレーミングのせいで、意欲が高まったり落ち込んだりするからだ。

 この基本的な傾向は、さまざまな場面で私たちの行動に影響を及ぼす。キャンペーンやポイントサービスなどによって無料で製品をもらったりサービスを受けたりしたいという意欲から、特定の報酬を得る目的で課題に熱心に取り組もうという動機、多様な製品やサービスを購入しようという決定まで、影響を受ける範囲はじつに幅広い。課題のフレーミングで、別の興味深い影響が出ることもある。目の前の課題に対する熱意や、その課題に共感できる度合いが、フレーミングによって変えられるのだ。

 私も2010年の夏にウォルト・ディズニー・カンパニーの研究開発グループのコンサルタントを務めたとき、これと似たような体験をした。新入社員は「トラディション101(伝統入門講座)」と呼ばれる最初のトレーニングで、同社の文化や伝統だけでなく、ディズニーの生涯についてたっぷり教わるのだ。こういったオリエンテーションを通じて、企業は新人を自社の使命に忠実で知識豊かな人材に変える。

 実際、人が初めて何かの団体に加わるときに経験するオリエンテーションは、たいていその点に的を絞っていて、新人が組織そのものや組織に入ることで得られる利点を知る機会としてフレーミングされている。

 人はそれぞれ組織に入る動機は違っても、普通はみなうまく溶け込んで成果をあげたいと望んでいる。これは単純な計画に思える。それでも、オリエンテーションのフレーミングによって、熱心で生産性の高い働き手になろうという個人の計画が変わってしまうことがあるのだろうか? また、組織がよく使っているフレーミングのおかげで、新人は新しい役割に対してよりいっそう熱心になるだろうか、それとも、そうさせるにはもっと効果的なフレーミングの種類がほかにあるのだろうか? 直感的には当然あると思うかもしれないが、少なくとも私の考えでは、この問題は確かめる必要があった。

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    フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
    ハーバード・ビジネススクールの経営学准教授(交渉術・組織・市場ユニット)。
    イタリア出身。経済学・経営学の博士号(Ph.D.)を持ち、ハーバード大学、カーネギーメロン大学等での講師を経て現職。他にも、ハーバード・ロースクールの交渉学プログラム、及びハーバードの「心・脳・行動イニシアティブ(Mind, Brain, Behavior Initiative)」にも正式に関わっている。
    意思決定や社会的影響、倫理観、モチベーション、創造性と生産性などを研究対象とし、経済学や経営学、交渉学といった枠組みを超え、社会心理学、行動経済学、組織行動学など、幅広い研究者と積極的に共同研究を行っている。研究成果を広く一般に伝えることにも注力しており、心理学と経営学の一流学術誌だけではなく、「ニューヨーク・タイムズ」、「ウォールストリート・ジャーナル」、「ビジネスウィーク」、「エコノミスト」、「ハフィントンポスト」、「ニューズウィーク」、「サイエンティフィック・アメリカン」など、さまざまな一般向け刊行物にも取りあげられている。
    また、得られた組織行動や意思決定の知見をもとに、企業や非営利団体のコンサルタントとしても活躍している。
    マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。
    http://francescagino.com/

    柴田裕之(しばた・やすし)
    1959年生まれ。翻訳者。訳書にジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)、ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト』(早川書房)、アレックス(サンディ)・ペントランド『正直シグナル』(みすず書房)、ジョン・T・カシオポ他著『孤独の科学』(河出書房新社)、マイケル・S・ガザニガ『人間らしさとはなにか?』(インターシフト)、サリー・サテル他『その〈脳科学〉にご用心』、ダニエル・T・マックス『眠れない一族』(以上、紀伊國屋書店)、ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない』、フランチェスカ・ジーノ『失敗は「そこ」からはじまる』(以上、ダイヤモンド社)ほか多数


    失敗は「そこ」からはじまる

    コカ・コーラ、サムスン、ヤフー創業者……
    綿密に計画したはずなのに、
    「あの人、あの会社が、なんでそんなことを?」

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    綿密に計画を練り上げて意思決定をしたはずなのに、気がついたら違う行動をしていた、という経験はないだろうか?
    新しいキャリアを切り拓くために勉強しようと決めたのに先延ばしにし、ダイエットを決意したのに翌日にはサボり、老後のために立てた貯蓄計画は日々の散財でダメになり、顧客ロイヤルティを高めるための新しいマーケティングプランはまったく逆の結果に終わり……。
    そう、私たちは往々にして、当初思い描いた計画から「脱線」し、そのせいですぐそこにあったはずの成功を逃してしまいがちだ。そしてその結果にがっかりし、やる気を失ってしまう。

    私たちの意思決定は、どうしてこれほど頻繁に脱線してしまうのだろうか?

    どうすれば、軌道から外れないようにできるのか?

    過去10年、この疑問に答えることに的を絞った研究プロジェクトをいくつも行い、人間心理と組織行動の両方を究めた新進の研究者にしてコンサルタントが、意思決定の失敗の本質、そしてブレずに成功するための「9つの原則」を読み解く。

    「失敗は「そこ」からはじまる」

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