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環境配慮型商品のパイオニアが行き着いた
「人にも、動物、植物にもやさしい経営」

――ヤシノミ原産国の自然を守る(サラヤ株式会社)

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第12回】 2009年4月28日
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 シアトルマリナーズのイチロー選手が、日米通算3086安打の新記録を樹立しました。“Baseball” を“野球”と訳したのは、明治草創時代の学生野球の育ての親といわれた、中馬 庚(ちゅうま かのえ)という人だそうです(*1)。小学生の頃、小さな空き地で“野球”をしていた私にとっても、“野球”という言葉は、子ども心にもしっくりと実感できる、巧妙な訳語だったのだと、あらためて思います。

 でも、近頃の日本語訳は、“Sustainability”を“持続可能性”と訳すなど、何となく直訳的な感じで、しっくりと実感できないものが多いように思えます。先日、気の置けない仲間の集まりで、この話題を持ち出したところ、「“Sustainability”ってのは、『これからもずっと、やっていける』ってことだよ」と言われました。なるほど、これなら、しっくりきませんか?

だれの記憶にもある
「緑の石鹸液」の仕掛け人

サラヤといえば「ヤシノミ洗剤」

 今回ご紹介するサラヤ株式会社は、“Sustainability”な環境経営で多くの賞を受賞している企業です(*2)。「ヤシノミ洗剤で有名な」と言えばご存知の方も多いのではないでしょうか。

薬用石鹸液「シャボネット」で手を洗う子どもたち

 この会社は、まだ石痢や疫病などの伝染病が多発していた戦後間ない1952年に創業されました。こうした時代にサラヤは、伝染病の“予防”のため、手洗いと同時に殺菌・消毒ができる液体の薬用石鹸液を日本で初めて考案し、事業化しました。皆さんも小学生の頃、学校の手洗い場で緑色の液体石鹸で手を洗ったことがありませんか?。

 実はこの写真の石鹸液容器も、サラヤが考案し製造したものなのです。石鹸液だけでなく、容器も製造した理由を更家悠介社長に伺ったところ、「当時は、液体石鹸そのものが存在していなかったので、容器からつくるしかなかったんですよ」とおっしゃっていました。今でも、液体石鹸と容器の製造を1つの会社で行なっているのはサラヤだけ、とのことです。

 このケースのように、「世の中に存在しない、新たな製品を普及させるためには、仕組みづくりから始めなければならない」ということは、これまでの連載でも書いている通りです。でもよくよく考えてみると、今のように社会が便利になったり、高度化する以前は、ビジネスを仕組みづくりから始めることは、当然のことだったのです。

 現代社会でもしも、「環境ビジネスが、なかなかビジネスにならない」というのであれば、それは新しい製品や価値観を、既存の社会システムに無理に乗せようとしているだけで、それを普及させるための仕組みづくりをしていないからなのかもしれません。

「手洗いは、衛生の基本」
私たちに刷り込まれた予防の概念

 サラヤは創業以来、「手洗いは、衛生の基本である」との信念に基づき事業展開をしています。伝染病や食中毒の“予防”のための手洗いです。「消費者のニーズ」という、世の中が求めた“結果”に応えることを企業活動の原点に据える企業が多い中、“予防”という概念を企業活動の原点に据えていることは、とても珍しいことではないでしょうか?

 更家社長にこの点も伺ったところ、すぐに「保険だって、予防みたいなものですよね」という答えが返ってきました。でも、これまで「保険≒予防」と考えたことがなかっただけに、意外な答えに思えました。これはどういう意味なのでしょうか?

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
☆ご意見・お問合わせはこちら  ☆Twitterアカウント:ken_miyama


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