余分な借金はどんどん返済したほうが企業経営は楽になる。そのためには、資産を処分して赤字が出たってかまわない。なぜ処分損が出ても大丈夫なのか、利益とキャッシュの関係性を知ることで、打つべき手が見えてくる。

経営者と銀行では、キャッシュフローの見方が異なる

「余分な借入はどんどん返済しなさい」

 私はいつもこうアドバイスしています。その返済原資は、当然、事業を通じて獲得したキャッシュです。では、1年間で獲得したお金(キャッシュ)はどう計算するかご存じでしょうか。

「キャッシュフロー計算書を見れば、お金の流れがわかると聞きました。しかし、さっぱりわかりません」
「そもそも、自社はそんなものをつくっていません。どうしたらキャッシュフローがわかるのですか?」
「お金が残るキャッシュフローの考え方を教えてください」

 こういう方も多いでしょう。それなら、こう計算してください。

経営者のキャッシュフロー=税引後純利益+処分損+減価償却費

 銀行が見るキャッシュフローは「営業利益+減価償却費」なので、経営者のキャッシュフローと違います。それはなぜでしょうか。

 営業利益と税引後純利益の間には、2つ大切なものがあります。「支払利息」と「法人税」です。経営者がキャッシュフローを考えるときは、この2つを引いたあとの利益、つまり、税引後利益で考える必要があるのです。

 銀行は、お金を貸し付けて、利息で稼ぐ商売ですので、融資先が利息を払えるかどうかが大切です。なので、営業利益をベースにして、キャッシュフローを考えるわけです。営業利益がたくさんなければ、利息を回収できないからです。一方で、経営者が自社のキャッシュフローを考えるときは、この利息は大きな社外流出になります。つまり、銀行の考えるキャッシュフローと、経営者が考えるべきキャッシュフローは違うのです。