やらなければいけないのに、どうしてもやる気が出ない。手をつけられないまま、棚上げしている作業はないだろうか。そんな時にあなたを確実に動かす、3つの方法がある。予防焦点、感情の無視、条件付けによる計画だ。

 

 ずっと後回しにしてきたプロジェクトの、期限がいよいよ迫っていて気が気ではない。それから、絶対に返事の電話をしなくてはならないクライアントがいる――どうせ苦情を聞かされるばかりで、貴重な時間が潰れるだけなのに。待てよ、そういえば今年は、ジムに行く回数を増やそうと決めたはずではなかったか――。

 やらなければいけないのに、どうしてもやる気が出ない。そんな時、何らかの方法で自分を動かせたら、罪の意識やストレス、失望感をどれほど減らせることだろう。もちろん満足感も高まり、もっと有能にもなれるはずだ。

 正しい作戦を取れば、物事を先延ばしにする癖を改善できる。どの作戦を選ぶかは、そもそもの理由によって異なる。

 理由1:失敗に終わることを恐れ、先延ばしにしている

 解決策:「予防焦点」を持つ

 あらゆる活動は、その目的を2つの観点から捉えることができる。一方は、「現在よりもよい状態になる」こと――つまり、成功や達成によって何かを獲得することが目的とされる。「このプロジェクトを成功させれば、上司に感心してもらえる」、「定期的に運動すれば、かっこいい体になれる」といった考え方だ。心理学者はこれを「促進焦点(promotion focus)」と呼ぶ。研究によれば、促進焦点を持っている時の人間は「利得を得る」という考えによって動機付けされており、「熱意」と「楽観的な気持ち」を持って取り組む時に最高のパフォーマンスを示す。

 これこそ望ましいだろうか? いや、もしあなたが「失敗に終わること」を恐れているのなら、促進焦点は適していない。不安や疑念があると促進焦点がうまく働かなくなり、結局は何の行動も起こせない場合が多いのだ。

 あなたに必要なのは、不安がマイナスに作用しない考え方――むしろ不安によって効果が高まるような考え方だ。向上や成功ではなく「予防」に焦点を合わせる時、人は活動の目的を「すでに手に入れたものを失わない」こと――つまり損失を防ぐことと見なす。この「予防焦点(prevention focus)」を持つ人にとって、プロジェクトを完遂する目的は「上司を怒らせないこと」「自分の評価を下げないこと」などだ。定期的に運動するのは、「怠惰に身を任せるのを防ぐ」ためである。

 拙著Focusで紹介したように、何十年にもわたる研究の結果、うまくいかないことへの不安は実際に予防の動機を高めることが示されている。損失を防ぐことに焦点を合わせると、危険を避けるにはただちに行動するしかないことが明らかになる。不安が大きいほど、危険から一刻も早く逃れようとする。

 不安に基づいて行動を起こすというのは、あまり楽しい話ではないかもしれない。あなたが通常は促進焦点型であれば、特にそうだろう。しかし、失敗への不安を乗り越えるためには、何もしなかった場合の悲惨な結末について真剣に考える以外によい方法はないと思われる。さあ、そのひどい光景を想像して縮み上がろう。怖いけれど、効き目はある。