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民主党マニフェスト、強味も弱点も「年金」にあり

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第90回】 2009年7月29日
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 7月27日、民主党のマニフェストが発表された。

 冒頭から余談で恐縮だが、主要日刊紙では「読売新聞」のみが26日朝刊でマニフェスト全文を25日に入手して記事を書いていた。福田内閣時に大連立構想に関わったとされる新聞社だけあって、民主党の幹部筋に情報パイプを持っているのだろう。

 さて、民主党への政権交代に現実味が出てきてた現在、注目のマニフェストだ。27日の夕方には全文がダウンロードできたので、同党が重視する生活・経済関係の政策を並べた「5つの約束」に沿って見てみよう。「5つの約束」のテーマは、民主党が挙げた順に、(1)ムダづかい、(2)子育て・教育、(3)年金・医療、(4)地域主権、(5)雇用・経済、だ。

◆(1)「ムダづかい」 予算の組み替えの成否に注目

 民主党が「ムダづかい」の削減、即ち国家予算の大幅な組み替えを政策テーマのトップに持ってきたことは、同党の政権交代への意欲の表れでもあり、適切だ。政権交代実現の暁には、新しい政府の組織作りや、官僚の人事マネジメントを適切に実行できるかどうかが問われることになるが、現在の支出のムダを削ることは、スピード感を持って最初に実行しなければならないテーマだし、コスト削減額として、民主党が挙げた数字は、むしろ控え目な試算だろう。

 21年度予算で207兆円のうち、借り入れの返済(79.6兆円)や年金医療等保険給付(46.1兆円)など削減が難しい項目を除いた削減対象となる支出は、補助金(49.0兆円)、公共事業(7.9兆円)、人件費等(5.3兆円)、庁費等(4.5兆円)、委託費(0.8兆円)、施設費(0.8兆円)で合計68.3兆円ほどあるが、これに対して9.1兆円という削減目標(平成25年ベース)は、むしろ小さ過ぎるくらいのものだろう。

 事業会社と国とを単純には較べられないが、企業は二、三割の経費削減を短期間で実行することがよくある。国の支出を変化させるのには法律の制定・変更など手続きに少々時間が掛かるが、営利企業ではない国の支出には削減できるムダが民間会社よりも多くたまっていることは想像に難くない。新しい政権になって取り組む予算は平成22年度予算が最初となるので、25年度予算は政権が継続していれば4回目の予算に当たる。

 本当に実行するつもりなら、計画としては時間を掛けすぎではないかとも思えるスケジュールだ。実現を一年早めるくらいでいいのではないか。

 他の政策を見ると杞憂なのだが、一つの心配は、支出のムダ削りを実行するに際して、他の政策項目で支出が増えなければ、財政全体が緊縮財政となることだ。例によって景気には海外の影響が大きいが、国内要因では、デフレ定着の懸念と、雇用の悪化から再度景気が悪化する懸念のある現状で、財政赤字を急激に縮小することは不適切だ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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