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「職域NISA」を警戒せよ!

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第364回】 2015年1月28日
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ズバリ、顧客の買い込み
NISAで「BBC営業」に軽いめまい

 筆者は、「職域NISA」という単語を目にしたときに、軽く目が回りそうな感覚と、やはり来たかという気分を感じた。筆者は、金融ビジネスに詳しい『週刊 金融財政事情』(一般社団法人 金融財政事情協会)という雑誌を長年読んでいるが、目下最新の1月26日号の特集タイトルが「職域NISAへの取り組み」であった。

 「職域NISA」とは、金融機関が取引先の職場単位でNISAの口座を獲得し、給与天引き(銀行の場合)あるいは口座の自動振替の形(証券会社の場合)で積立投資を行うような営業形態のことだ。

 表向きは「銀行や証券会社は、現役世代の最大のマーケットである職域で投資セミナーなどを開催し、積極的にNISA口座の開設と投信積立てを推進」といったアプローチになる。

 また、日本証券業協会、全国銀行協会、投資信託協会など13団体で構成するNISA推進連絡協議会は、昨年12月に「職場積立NISAに関するガイドライン」及び「『職場積立NISA』利用規約雛形」を発表した。

 NISA(少額投資非課税制度)は、昨年導入された株式・株式投資信託などのリスク商品による利益を対象とした税制優遇制度で、1人当たり年間100万円までの投資の収益について、5年間にわたり非課税とするものだ。新制度の開始を巡って金融機関各社は、主に個人に働きかけて顧客獲得競争に励んだ。NISAは基本的に「BtoC」のビジネスだった。

 だが今後、金融機関をまたぐNISA口座資産の移管ができるようになりそうなこと、個人単位の働きかけでは口座と資産獲得の効率が悪いことなどから、金融機関は取引先企業に働きかけて、自社のNISAを従業員に対する福利厚生の一環として採用させる「BtoB」のチャネルで働きかけて、その先にいる個々の顧客(C)を獲得しようとする、いわば「BBC営業」を新たな作戦として採用しようとするのが目下の動きだ。目的は、ズバリ顧客の「囲い込み」だ。

『週刊 金融財政事情』の特集記事は、これまで高齢者層を中心として来た投資信託のビジネス基盤の伸び悩みが明確になったことで、今後は現役世代の取り込みが不可欠だという。「現役世代は投資額のボリュームが小さいために当初の収益性こそ乏しいが、投信積立ならば一定期間にわたって毎月の販売が発生し、その後も、退職金や相続などに伴う資産運用ニーズが発生し得ることから、将来的な収益化や優良顧客の囲い込みにつながる」というのが、職域NISAに取り組む金融機関のビジネス上の狙いだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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