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魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

衝撃!うつぼをさばく秘密兵器は“あの家電”だった

池田陽子 [食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]
【第8回】 2015年2月2日
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うつぼ。やっぱりグロテスクで怖いです…

 「怖そうな顔をした、ヘビみたいなグロテスクな生きもの」

 普通の人にとってはそんなイメージが強い存在、うつぼ。しかし、高知県人はみな「あんなに美味しいものはない」と口を揃えるほど、高知の老若男女に愛されている。その「局地的うつぼ愛」は前回お伝えしたとおりだ。

 「そんなにおいしいなら今度、家でさばいてみようかな…」とつぶやいていたら、高知県須崎市の水産加工会社「みなみ丸」のオーナーでもある森光貴男さんから思わぬ答えが返ってきた。

 「とんでもない!家ではムリです。さばけるようになるまでには2年以上の“修行”が必要です」(森光さん)

 ますますミステリアスになるうつぼ……一体どんなさばかれ方をしているのだろうか。高知県須崎市にいる熟練のさばき技を持つ職人を尋ねることにした。

初めてだと1本2時間かかる!?
プロでも厄介なうつぼのさばき

細川國男さん。じつは、うつぼばかりか、海とは無縁の岐阜県出身!

 須崎市内には現在、うつぼをさばく技術を有する十数名の職人や料理人がいる。さまざまな、うつぼ料理が楽しめる居酒屋「大吉」のご主人である細川國男さんもそのひとり。森光さんの「うつぼさばき師匠」だ。

 「身はプリプリで、ゼラチン質のとろりとした部分がとても美味しいですよ」と細川さん。

 「でも、さばくのは本当に厄介な魚。魚のなかで、いちばん手間がかかるね」

 細川さんも、さばき方をはじめて習ったときには1本2時間かかったという。それでは商売にならない。「10分くらいでさばけるようになるまでには2年はかかったね」。それでも毎日、「感覚をつかめるようになるまで」出だしの1、2本は腕ならしだという。

 さっそく、細川さんに、うつぼをさばくところを見せてもらうことになった。大きな、まな板の上には、でーんと立派なうつぼの姿。「これで3キロくらいだね」。美味しいサイズは皮と身のバランスがよい2~3キロくらいのもの。「それ以上になると味がしなくなる」そうで、大きければいいというものではないらしい。

 「うつぼは通年獲れるけど、12~2月ごろが、肉厚で脂のノリも、ほどよくていちばん美味しいね」と細川さん。うつぼは、高知では専門に釣る漁師は少なく、いちばん多いのはクエ漁と同時に、カゴ漁で釣り上げるというスタイル。須崎でもシーズンである冬場を迎えると、うつぼ漁を本格的にスタートすることが多いという。

時短で強力な“ぬめり”を撃退
秘密兵器は「洗濯機」だった!

うつぼをさばく。ちなみに“急がなければ”冷凍しておけば、ぬめりはとれる

 「じゃあ、はじめますか」。細川さんが、うつぼの頭に大きな釘を打ち込んで、まな板に固定した。

 「まず厄介なのが皮の性質。ぬめりが凄くて扱いづらいんです」と細川さん。時間があるときは、塩をふってたわしで洗うのだが、なにせ、うつぼをさばくのには、時間がかかる。急ぐときには洗っている時間がもったいない。そこで、細川さんは、とっておきの時短テクを思いついた。「秘密兵器を使います」。秘密兵器は店の前に置かれていた。

 「洗濯機」である。

 もちろん、「うつぼ専用機」ではない。ごく、ふつうの家庭用洗濯機に「うつぼを入れてスイッチオン」。すすぎ10分、もちろん、仕上げは脱水。「そんなことくらいで、崩れるヤワな魚じゃありません」(細川さん)。「1度に20匹のぬめりがとれて便利だね」。

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池田陽子[食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント]

宮崎生まれ、大阪育ちのアラフォー。立教大学卒業後、出版社にて女性誌、ムック、機内誌などの編集を手がける。取材を通して、カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは?という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。自身の体調の改善、美容効果などをふまえてふだんの暮らしの中で手軽に取り入れられる薬膳の提案や、漢方の知恵をいかしたアドバイスを、執筆、講習会などを通して行う。また、日本各地の食材を薬膳的観点から紹介する活動も積極的に取り組み、食材の新たな魅力を提案、発信を続け、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。著書に「ゆる薬膳。」(日本文芸社)「缶詰deゆる薬膳。」(宝島社)、「『ゆる薬膳。』はじめたらするっと5kgヤセました!」(青春出版社)などがある。
■HP:www.yuruyakuzen.com
■Facebook:https://www.facebook.com/yoko.ikeda.79

また、鯖をこよなく愛し、日本全国・世界のさば、さば料理、さば缶を楽しみ、さば文化を語り、さばカルチャーを発信し、さばで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動している「全さば連」(全日本さば連合会)にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。
■全さば連HP:http://all38.com
■FACEBOOKページ:http://www.facebook.com/mackerel.cava  

 


魚食王国ニッポン~元気をつくる「浜のめし」 池田陽子

和食が世界遺産に認定され、改めて見直される「魚食文化」。日本各地にはさまざまなおいしい魚が水揚げされ、地元ならではの「魚料理」があります。この連載では日本各地の各種魚の産地を訪ね、「とっておきの漁師料理/ご家庭の魚料理/ご当地魚グルメ」を紹介。あわせて漁の様子、市場の風景など、おいしい「浜のめし」を支える人々の活躍をお届けします。

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